岡山大学経済学会雑誌 8 3 (1) 20 ,1∼ 0 , 06 2 《論 説》 日本の公債は危機レベルに達しているのであろうか !"公債問題はどのように考えるべきか!" 土 生 芳 人 はじめに しばらく前から,日本財政は非常な危機的状況にあるという議論が盛んに行われてきている。背景 にあるのはいうまでもなく,毎年の多額の財政赤字であり,それによる莫大な額の公債残高の累積で ある。最近,景気がかなり上向いてきて,それにともなって税収もある程度増大し,財政赤字も一時 に比べれば減少の兆しを示してきているようにみえるが,日本財政危機論はなお根強く存続してお り,たとえば,日本財政はタイタニック号のようなものだ,沈没寸前の状態にある,というような議 論が繰り返し行われている。 しかし,私は日本財政はそれほど危機的状況にはないと考えている。私見によれば,日本財政危機 論にはほぼ共