石油輸出国機構(OPEC)にとって最大の敵は、米国のシェール企業ではない。シェール企業が利用しているヘッジ取引だ。 2014-16年の原油価格下落の最悪期を乗り切った米国の石油探査会社は、今年の14%の下げにも動じていない。今年1バレル=55.24ドルまで上昇した原油価格は、今月14日に48ドルを割り込んだ。ワーウィック・エナジー・インベストメント・グループのキャサリン・リチャード最高経営責任者(CEO)は、現在米国で操業している多くのシェール企業の収益が打撃を受ける価格水準は30ドル台以下だろうと指摘する。同社は5000本余りの油ガス井の権益を保有している。 これは、多くのシェール企業が20年までの大半の期間の原油価格が保証される契約を利用して将来の収益を既に確定しているためだ。こうしたシェール企業の回復力は、原油価格押し上げと、逼迫(ひっぱく)した財政の改善に向け供給削減を目指すOPE
コロラド州デンバーで行われたフラッキング反対デモ RJ SANGOSTIーTHE DENVER POST/GETTY IMAGES <ロシアはエネルギー利権防衛のためアメリカ国内の反対運動を陰で操っている> ロシアの秘密工作は、アメリカの大統領だけでなくエネルギー産業にも及んでいる。 先月発表された大統領選へのロシアの干渉に関する米情報機関の報告書には、ロシアがアメリカのフラッキング(水圧破砕法)によるシェールガス・オイル生産を妨害するため、反対派に資金を提供し、運動を裏で操っていたことを示す証拠が含まれていた。ウラジーミル・プーチン大統領の狙いは石油価格の上昇と米経済の不安定化、そしてアメリカのエネルギー自給達成を阻止することだ。 【参考記事】「プーチン、トランプ勝利を狙いサイバー攻撃指示」米政府関係者 フラッキングは地下のシェール(頁岩)層の岩盤に超高圧の水を注入し、石油や天然ガスを取
5月中旬以降、米WTI原油先物価格は1バレル=45ドルから50ドルの間で推移してきたが、ここに来て下落傾向が顕著になってきている。7月26日のWTI原油先物価格は3カ月ぶりに同42ドル台に下落した。 市場関係者の嫌気を誘った直接の原因は、米国の石油リグ(掘削装置)稼働数が4週連続で増加したことだ。ただしシェールオイルの生産量は減少を続けたままである。原油市場で弱気ムードが支配している真の理由は、ドライビングシーズンの真っ最中なのに米国のガソリン在庫が4月以来の高水準になっているからだ。夏の最盛期としては少なくとも10年ぶりの高水準にある。 筆者は以前のコラム(「原油価格が下落し始めた本当の理由」)で昨年と同様に米国でガソリン在庫が増加する兆しが出ていることを指摘したが、この認識が市場関係者の間に広く浸透したようだ。 中国のガソリン在庫が記録的な水準に 米国ではガソリン需要も石油需要全体も堅
なぜサウジアラビアは原油の生産調整に慎重なのか。エジプト・カイロで会談したサウジアラビアのサルマン国王(左)とエジプトのシシ大統領(2016年4月7日撮影、資料写真)。(c)AFP/HO/EGYPTIAN PRESIDENCY〔AFPBB News〕 米ビジネスニュース専門ウェブサイト「ビジネスインサイダー」(4月7日付)は仏ソシエテ・ジェネラルのアナリスト、アルバート・エドワーズ氏の警告レポートを掲載した。エドワーズ氏が注目しているのは米国企業の利益の急激な減少である。これにより多額の債務を抱えている企業が大量倒産に追い込まれるというのだ。 また、4月8日付けロイターによれば、米国の主要500社の今年第1四半期の1株当たり利益は前年比7.6%減少するという。3四半期連続の減益となれば2008年のリーマンショック以来となる。 2015年末時点の予測では今年第1四半期は約2%の増益に転じるも
米国ではガソリン価格などの下落で個人消費が伸びても、エネルギー部門のマイナスを吸収できないでいる(写真はイメージ) 2月1日の米WTI原油先物価格は大幅反落し(1バレル=31.62ドル)、今年最長の上昇局面となった先週の上げを帳消しにした(2日の原油価格は米在庫の増加観測で同30ドル割れした)。 先週から「原油安阻止に向けて全産油国が生産量を一律に5%削減する」との期待が市場関係者の間に広まり、原油価格は1バレル=26ドル台から同34ドルを超える水準に達していた。だが、産油国が減産に合意するとの期待は後退してしまった。 40ドル超に上昇するとの見立てだったが・・・ かつてリーマンショック直後の2008年12月に、イラクを除くOPECの11カ国(当時)が420万バレルの減産で合意した。すると、1バレル30ドル台まで下落していた原油先物価格がその後半年間で70ドル台まで上昇したという経緯がある
アメリカ議会は、1970年代の石油危機以降40年間にわたって規制してきたアメリカからの原油の輸出を解禁する措置を盛り込んだ、来年9月末までの歳出法案をまとめ審議することになりました。 アメリカでは、シェールオイルの生産急増を受けて、石油業界などから余った原油を輸出できるよう求める声が上がり、野党・共和党内に解禁を目指す動きが広がっていました。 これに対し、オバマ大統領や与党・民主党は、国内のガソリン価格が値上がりし、地球温暖化対策を妨げることにもなるなどとして反対してきました。 しかし、民主党側が求める太陽光発電の普及を後押しする減税措置を認めることで与野党が折り合い、原油の輸出の解禁が法案に盛り込まれました。今後、議会の上下両院の審議などを経て、歳出法案が成立すればアメリカからの原油輸出の道が開かれます。 原油価格は、OPEC=石油輸出国機構が減産を見送るなど供給の過剰な状態で、値下がり
イランの首都テヘランのサウジアラビア大使館前で、イランからの巡礼者たちが死亡した大巡礼での圧死事故に抗議する人々(2015年9月27日撮影)。(c)AFP/ATTA KENARE〔AFPBB News〕 「米シェール業界、近づく『厳冬』」と伝えたのは10月20日付の日本経済新聞である。生産効率を向上させ生き残りを図ってきたシェール企業だが、7月以降、原油価格が1バレル=50ドル割れの状態が続き、「シェール企業は年末から年明けにかけて胸突き八丁を迎える」との観測が高まっている。 シェール企業の大半は、第2四半期の掘削向け支出が石油・天然ガスの売却収入を上回るなどキャッシュフロー不足が深刻化している。そのため、「1月以降、総額615億ドル相当の株式や債券を売却し、そのうち半額は融資の返済等に振り向けた」という。 米シテイによれば、シェール企業の融資額は最大15%減少される可能性がある。シェール
アメリカ東部にある原発について、運営する電力会社は、シェールガスの普及で電力価格が下がり採算性が悪化したなどとして、4年後までに運転を停止して廃炉にすると発表しました。 その理由について、エンタジー社は、シェールガスの生産量が増えたことによる電力価格の低下や、安全対策にかかる費用が増えたことで運転コストが上昇し、採算性が悪化したためだと説明しています。 ピルグリム原発は、東京電力福島第一原子力発電所の1号機などと同じ型の原発で、1972年から営業運転を続けていますが、ことし1月、外部電源が失われて原子炉が自動停止するなどトラブルが相次いでいました。 このため、アメリカのNRC=原子力規制委員会は、先月、この原発の安全性の評価を全米で最も低いランクに位置づけていて、地元からは、安全対策への懸念を指摘する声も上がっていました。 エンタジー社は去年12月、アメリカ東部にある別の原発の運転も停止し
サウジアラビアが過去最高水準にある生産量を引き下げる見通しを明らかにしたが・・・。サウジアラビアのサルマン国王〔AFPBB News〕 世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアは、過去最高水準にある生産量を早ければ9月に引き下げる見通しであることを明らかにした。減産は足元の水準から約20万~30万バレルと小規模だが、「原油価格が1バレル=20ドルまで下がっても減産しない」(ヌアイミ石油鉱物資源相)という2014年12月の方針を転換することになる。 しかし原油市場はこの報道にまったく反応しなかった。「OPECの7月の原油生産量が過去最高水準に達した」(7月31日付ロイター)ことが伝えられ、サウジアラビアをはじめとする主要加盟国が市場シェアを重視する戦略を堅持していることが明らかだからである。 7月のOPECの原油生産量は日量3201万バレルで、1997年の調査開始以降、最高を記録した。これは
By nikzane 安くて豊富な労働力を活かして「世界の工場」として世界中の工業品の生産を一手に請け負ってきた感のある中国ですが、ここ数年は物価の高騰や賃金レベルの上昇からその競争力を失ってきたと言われてきました。これに対するようにアメリカでは製品の製造コストが減少し、中国と同水準に下落するという現象が起こっており、さらに今後はアメリカが中国を下回ることになると考えられています。 U.S. Manufacturing costs are almost as low as China’s - Fortune http://fortune.com/2015/06/26/fracking-manufacturing-costs/ 世界的なコンサルティング企業であるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の調査によると、アメリカ国内で製品製造コストは減少を続けていることが明らかになっていま
OPEC加盟国イラクの北部バイジにある石油精製施設(資料写真)。(c)AFP/Stan HONDA〔AFPBB News〕 増産で市場シェア確保を目指すOPEC 原油価格が下落を始めてから1年が経った。2014年7月まで1バレル=100ドル前後で推移していた価格は42ドル台まで下落し、2015年3月半ばから反転。5月には約5カ月ぶりに60ドル台に達し、以降2カ月にわたり原油価格は60ドル前後で推移している(7月1日は4月以来の大幅安となり56ドル台となった)。 しかし原油の供給過剰という構図に変化は見られない。むしろ需給バランスは悪化している。供給の増加が続く一方、最大のエネルギー消費国である中国の需要見通しに陰りが出ているからだ。米エネルギー省が6月に公表したデータによれば、世界の原油の供給過剰量は昨年の第2四半期末から2倍以上に増加し、日量260万バレルに達している。 石油輸出国機構(
サウジアラビアでは4月29日、サルマン国王(79歳)が驚きの人事を発表している。ムクリン皇太子(今年1月に死去したアブドラ前国王が、自らの部族の後見人として指名したとされていた)に代えて、副皇太子だったムハンマド内相(55歳、サルマン国王の兄の息子)を皇太子に昇格させ、自分の息子(アブドラアジズ王子の弟)であるムハンマド国防相(29歳)を副皇太子(皇位継承第2位)に任命したのだ。 イエメンへの軍事介入に消極的だったと言われるムクリン皇太子(母親がイエメン出身)が退位を申し出たとされているが、事実上の更迭との見方が強い(イランメデイアによれば5月2日、ムクリン元皇太子は声明を発表し、「すべてのサウジアラビア国民はサウジアラビアの国王と皇太子、国防大臣の利己的な行動に抵抗すべきである」と訴えたという)。 ムクリン元皇太子をはじめとするイエメンへの軍事介入に消極的だった勢力を排除したことで、サウ
原油価格が再び上昇するのを待っている大量の原油が地下に存在することは、価格上昇の兆候が見られた時点で原油が直ちに増産されることを意味する。そのため、フラックログは今後の原油価格回復を鈍らせる「足枷せ」になる可能性が高い。 サウジは今後も増産か OPEC各国でも、原油在庫が過去最高水準にまで積み上がっているようである。 サウジアラビアをはじめOPEC諸国は増産を続けているため、4月24日時点のOPECの原油生産量は、需要に対して日量約200万バレルの供給過剰となっている。これは過去10年間で最大の水準である。こうした状況を踏まえ、市場関係者の間には、「世界の原油需給のファンダメンタルズに大きな変化はなく、原油相場は短期間に少々急速に上昇しすぎた」との不安が頭をもたげてきている。 「世界最大の産油国サウジアラビアは顧客を満足させ、均衡の取れた市場を維持するためのすべての原油需要に対応する」──
原油価格急落が世界の金融市場に強いストレスを与えている。2008年の世界金融危機を受けて量的緩和を開始した米連邦準備制度理事会(2011年8月9日撮影、資料写真)〔AFPBB News〕 ブルームバーグ(2015年4月10日付)は、ゼネラルエレクトリック(GE)が金融サービスの管理を整理するため、自社が保有する甚大な商業用不動産を米投資会社ブラックストーングループや米銀大手ウェルズ・ファーゴに売却するための協議を進めていることを伝えている。 なぜGEはここにきて大胆なリストラを実施しようとしているのだろうか。 米国の商業用不動産価格は、金融危機後の2010年1月を底に上昇に転じ、2013年9月に金融危機前のピークを超えるなど、住宅用不動産とは対照的に「完全復活」を遂げた。2014年に入ると、米国での永住権取得を狙った中国人の「買い」が殺到(注)。商業用不動産の上昇局面は当分続くだろうとの観
国際エネルギー機関(IEA)は3月13日に月報を発表した。月報の中の「米国の原油在庫が過去最高水準となり、近く貯蔵タンクが不足する恐れがある。足下の原油価格の安定はうわべだけのものであり、原油価格底打ちのためにはさらなる生産調整が必要だ」との指摘が材料視されて、16日の時間外取引ではWTI先物価格は2009年3月以来6年ぶりの安値に下落した(1バレル当たり43.57ドル)。 シェール企業各社は生産効率の悪い産地でリグ(掘削機)の稼動を減らす一方、効率の良い産地では生産量を増やしている。そのため「生産量が減らない」との見方が根強い。 昨年急落した原油価格が最近まで安定していたのは、要因の1つとして「石油精製会社による原油の安値買い」があったからだ。しかし、その効果も薄れつつある。世界全体で石油の精製処理量が急増したため、石油製品の分野でも供給過剰のリスクが生じつつあるからだ。 IEAによれば
3月23日、ロシアのエネルギー産業に対する制裁強化に踏み切りたい米国だが、欧州では自らへの経済的ダメージを懸念して緩和を望む声も出始めており、打つ手が限られてきている。写真はロシアのプーチン大統領。19日撮影(2015年 ロイター/Maxim Zmeyev) [ワシントン 23日 ロイター] - ロシアのエネルギー産業に対する制裁強化に踏み切りたい米国だが、欧州では自らへの経済的ダメージを懸念して緩和を望む声も出始めており、打つ手が限られてきている。 エネルギー産業はロシア経済の生命線で、ウクライナ問題に伴う欧米の対ロ制裁で主な対象となってきた。北極海探査など、制裁を科しやすい計画はすでに対象となっているため、米国はロシアの石油輸出に制限をかけるような、踏み込みたくない選択肢しか残っていない。
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く