【連載】『歴史とは何か』の人びと(1) E・H・カー(一八九二─一九八二)との遭遇は前触れなしであった。一九八〇年の夏の終わりに始まったわたしのケインブリッジ留学生活だが、所属はチャーチル学寮で、その家族寮に住んでいた。チャーチルにもロイ・ポータ、マーク・ゴールディ、ポール・ギンズバーグといった才気走った若手歴史家はいたのだが、わたしの研究指導教員(スーパーヴァイザ)、ボイド・ヒルトンはトリニティ学寮のフェローなので、研究面談はそちらで行われた。歴史学部における講義とは別立てである。ボイドは当時まだ三五歳、博士論文をもとに公刊されたモノグラフ『穀物・カネ・商業』で知られていた。一九世紀イギリスの政治社会史という点では、カーの『歴史とは何か 新版』(岩波書店、二〇二二)にも出てくるG・キトスン=クラークの後任という役回りだったのかもしれない 大学都市ケインブリッジの緑ゆたかな郊外を自転車でゆ
フィルマーは家族を支配する権限が家父長によって継承され王権につながっているという王権神授説で名高い。ジョン・ロックが批判したこともあって従来は旧弊な思想家と見なされてきたが、その著作は最近になって再評価されつつあり、今日において近代化とは何であったか、何を失ったのかを考え直すための重要な古典となっている。本邦初訳。 伊藤 宏之(いとう ひろゆき) 1945年 愛知県生まれ。福島大学名誉教授。 主な著訳書に、『イギリス重商主義の政治学——ジョン・ロック研究』(1992年、八朔社)、『近代政治理論の古典と現代』(2004年、北樹出版)、ジョン・ロック『全訳 統治論』(1997年、柏書房)、ホッブズ『哲学原論/自然法および国家法の原理』(2012年、柏書房)がある。 渡部 秀和(わたなべ ひでかず) 1963年、福島県生まれ、福島県公立学校教諭。 主な訳書に、ホッブズ『哲学原論/自然法および国家
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