小澤俊夫著 『ときを紡ぐ 昔話をもとめて』 昔話の研究者としても知られるドイツ文学者、小澤俊夫による自伝的回想。「この本は、季刊誌『子どもと昔話』に連載中の「糸つむぎ」のうち、回想的な部分をまとめたもの」である。 1994年に俊夫は食道癌と診断された。「ウィーンで働いている長男淳にも伝えた。東京で忙しく音楽活動をしている次男健二にも伝えた。ぼくの弟たちにも伝えた」。 言うまでもなくこの「次男健二」とはあの小沢健二のことである。手術当日、「妻が早く来てくれたが、健二はなかなか現れない。そのうちに電話があり、「寝坊した。今から行く」という。タクシーで駆けつけたそうで、ぼくが病室から運び出される直前に到着した。ぼくは、車つきのベッドで手術室へ運ばれ、入り口で妻と健二と握手して別れた。ぼくは戻れるのだろうか、とそのとき思った」。 俊夫が不安にかられたように、軽いものではなく手術は六時間に及ぶもの