記事:じんぶん堂企画室 1978年の柄谷行人さん 書籍情報はこちら ――様々な言語に翻訳されている『日本近代文学の起源』についてお聞きします。自分の書いた本は読み返さないという柄谷さんですが、これはちょっと例外のようですね。 柄谷 外国語版が出る度に序文を求められたから、僕としては珍しく何度も読み直したんだけど、今はもうだいぶ忘れているよ(笑)。 ――まず、どういう本か、というところからですが、日本の明治文学についての論考が収められた本です。「風景の発見」、「内面の発見」、「告白という制度」と、“風景”“内面”“告白”など当たり前のものになっていることが、実は近代化のなかで生まれた装置だということを、夏目漱石や森鷗外、国木田独歩に田山花袋などの明治文学を引きながら、次々に指摘していきます。例えば、人間の“内面”を描くために言文一致が確立されたのではなく、言文一致が確立される過程で“内面”が