『博士の愛した数式』という作品に、素数は美しいという話が出てくる。普通のひとが風景や絵画を美しいと思うように、数学者は数式を美しいと思うのだ、と。それを指して「斬新な発想だ」とか言うらしい。そんなのはSFが数十年前に通過した場所だ!お前らが!無視した世界に!宝石はあったのだ!お前らが踏みにじった世界に、美しい命は確かに存在していたのだ! いや、別に滅びたわけじゃないですけど。 ていうか、こういうSFテイストのある作品のヒットをきっかけに、みんながSFを読むようになればいいと思っていますけど。誰かアルジャーノンみたいなの書いてくれねーかな。 とにかくちかごろは、このような二律背反にさいなまれることが多い。 SFというジャンルには、そこでしか感じることのできない感動がある。それはもちろん、ミステリにも純文学にもスラップスティックにもある、それぞれが持っている魅力というものだ。SFがそれらより優