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今、ウクライナの戦場はどうなっているのか、本論に入る前に米戦争研究所(ISW=Institute for the Study of War)などの報告書をまとめる。 東部戦線の地上戦闘では、ロシア地上軍が局地的に攻勢を仕掛けている。 ザポリージャ正面などの南部戦線では、ウクライナ地上軍がロシア軍の防御線を突き破ろうとして、少しずつではあるが、戦場の要点を奪回しつつある。 南部戦線のへルソン正面では、ウクライナ軍特殊部隊など少人数がボートに乗船し、ドニエプル川を渡河し、ロシア側陣地に潜入した。 そして、今後の渡河作戦のために、小さな橋頭保を3か所作りつつある。 これらの作戦に連携して、後方連絡線となるクリミア半島とロシア本土を繋ぐクリミア大橋、クリミア半島とザポリージャ州を繋ぐ2つの橋梁を部分的に破壊している。 また、弾薬や兵員の後方補給点となるロシアが占拠している地域内の弾薬・燃料施設、訓
大阪・関西万博のパビリオン建設が大幅に遅れている。 労務費や物価の高騰など遅れの要因は一つではないが、根底にあるのは万博協会のマネジメント能力の欠如。 日本はオペレーションの高さを世界に誇ってきたが、その部分も劣化し始めているのかもしれない。 (植村 公一:インデックス代表取締役社長) 2025年国際博覧会(大阪・関西万博)のパビリオン建設が遅れているという報道が連日のようになされています。 私が代表を務めるインデックスは建設・インフラプロジェクトのプロジェクトマネジメントが本業であり、いくつかのパビリオン建設のプロジェクトマネジメントに実際に関わっているため、着工前に必要な建築基準法上の仮設建設物許可申請が進んでいないという話は少し前から聞いていました。 それでも、万博開催まで2年を切っている今、許可申請を出した国内パビリオンが全体の約3割に過ぎず、参加国・地域の海外館に至っては申請数が
「何のことだろう?」と気になるタイトルで静岡新聞が始めた「サクラエビ異変」が4年半の連載を閉じた。駿河湾へ注ぐ富士川流域に暮らす人々を巻き込み、行動に駆り立て、記者はさらに調査を深めて、また一歩進む。「課題解決型報道」としてジャーナリズムの世界でも注目された。その連載を担当した坂本昌信記者(現在、静岡新聞清水支局長)に話を聞いた。 暴かれた国策民営会社、日本軽金属株式会社の悪事 ――2018年春の漁獲減少を契機に、富士川の上流から下流にかけて起きている問題を報じていきました。第1章は「母なる富士川」として上流で問題になっている堆砂問題から始まりましたね。 「静岡新聞では編集局全員でキャンペーン連載のテーマを話し合って決めるのですが、その年はサクラエビの不漁に決まりました。 サクラエビ漁は1894年に富士川河口で、アジの船引き網漁で偶然かかって始まったとされます。現在では静岡県民のソウルフー
(科学ジャーナリスト:添田 孝史) 地震のリスクを科学的に評価する(リスク評価)。その評価をもとに、被害を小さくするためハードやソフトの対策を進める(リスク管理)。それが地震防災の進め方だ。 しかし311前の東北地方の津波リスク評価は、電力会社を中心とする「原子力ムラ」の圧力でねじ曲げられており、そのため津波で多くの人が亡くなり、原発事故も引き起こした可能性がある。そんな疑惑を、元日本地震学会会長の島崎邦彦・東大名誉教授が、3月末に発売された著書『3.11 大津波の対策を邪魔した男たち』(青志社)で告発した。この告発は、一般の人だけでなく、地震学者など専門家の間でも話題になっている。 「おかしなことが起こっている」だが背景はわからなかった 島崎さんは、2002年以降、津波のリスク評価が水面下で巧妙にねじ曲げられていった経緯を、公開されていなかった議事録や電子メールなどを引用して、研究者や官
メディアに登場する電波芸者的な日本人キャラクターから「高齢者は老害化する前に集団自決、集団切腹みたいなことをすればいい」といった発言があったとニューヨーク・タイムズが報道しました。 各国のメディアも後追い報道して、いわゆる炎上を見せています。発言が言語道断なのは言うまでもありません。 この低レベルな発信が見落としていた一点は、日本国内向けに横文字の肩書で舶来のハクをつけたつもりで日本語で発言した内容が、日本以外に知れ渡ることはまずないと思い込んでいたことでしょう。 しかし、米国アイビーリーグの大学名などと共に発信すればただ事では済まないという事実が全く分かっていない。完全な「国際感覚欠如」を世間に晒してしまいました。 すでに現下のAI化が進んだグローバル情報社会ではこうした詐術は通用しません。かなり古いタイプの低レベルな発想と言わねばならない。 現実にはこんな報道が駆け巡っています。 「A
(沖 有人:スタイルアクト代表取締役) 日本は10年以上前から人口減少が始まり、空き家問題が取りざたされるようになった。しかし、新規住宅着工戸数は10年以上80万~100万戸の間でほぼ横ばいで減る傾向を見せていない。 その中にあって、都市部の家賃は上昇し、マンションや戸建ての分譲価格は高騰している。一般的に価格は需給バランスで決まると言われているが、現実には真逆のことが起きている。 なぜ全国の不動産価格は高騰しているのか。また、当面の間、不動産価格が上がると予測されるのはなぜなのだろうか。そのあたりについて聞かれることは少なくないが、そのメカニズムは意外に簡単に説明することができる。 確かに、日本の総人口は減少している。少子高齢化に突入しており、出生人口は死亡人口より少ない。その中で、働き手となる生産年齢人口(15-64歳)は2015~20年の5年間で227万人、年平均45万人減少している
「やばい」「嫌がらせ」。Google検索窓に「別子山」と打ち込むと、こんなワードがサジェストされる。愛媛県新居浜市の別子山(べっしやま)地域に移り住んだ地域おこし協力隊員が配信したYouTube動画が話題を呼び、この旧村地帯はいま、世間からそんなイメージを抱かれている。かつて銅山として栄えた別子山は、ここからどう立ち直るか。そもそもなぜ、こうしたトラブルが起きてしまったのか。農山村への移住に詳しい国学院大学の嵩和雄(かさみ・かずお)准教授に聞いた。(河合達郎:岐阜県本巣市地域おこし協力隊、フリーライター) 集落の草刈りのルール ――話題になった「移住失敗」をどうみましたか。 嵩和雄氏(以下、嵩氏):私は学生時代から約9年間、熊本県小国町に移住し、地域づくり活動に従事していました。当時住んでいた隣町で、集落の草刈りがあった日のことです。 自分の自宅周辺から草刈りをしたところ、その後の飲み会で
(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長) 半導体が支えている人類の文明 あなたは毎日、インターネットに接続されたスマートフォンやPCを使っているだろう。そのスマートフォンやPCには、多数の半導体が搭載されている。またインターネットには、通信基地局やデータセンターの存在が必要不可欠である。その通信基地局やデータセンターは、膨大な半導体に支えられている。 あなたの自宅やオフィスには、照明器具があり、各種の電機製品があるだろう。その動力である電気は、発電所でつくられ、変電所を介して送電されている。その発電や送電には、パワー半導体などが活躍している。 あなたは通勤のために電車に乗ったり、出張や旅行のために飛行機に乗ったり、ATMで銀行預金からお金を引き出したりしているだろう。その電車の運行システム、飛行機の自動操縦システム、銀行の基幹システムなどは、半導体が制御している。 このよ
長者番付にも名を連ねる、楽天グループ・三木谷浩史会長兼社長。最高所得税率の引き下げを訴えるが…(写真:REX/アフロ) 「金融資産と有望な人材を日本国外へ流出させる愚策」「経済に貢献した個人への懲罰的な課税」…。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が、富裕層の税負担を強化する政府与党の方針を「文春オンライン」を通じて強烈に批判した。これは「富裕層による、富裕層のための批判」だろうか。本当に頭脳流出は起きるのだろうか。 提言に疑問を投げかけた社会学者の西田亮介・東京工業大学准教授に見解を聞いた。(聞き手:河合達郎、フリーライター) ※参考:「文春オンライン」が配信したYahoo!ニュース『三木谷浩史氏「政府与党は課税強化を見直すべき 有能な人材が日本から出ていく」』 ※参考:新経済連盟・三木谷浩史代表理事による「高所得者層の税負担増加に向けた検討に対する緊急コメント」 楽天がAmazonと伍す
(山本一郎:情報法制研究所 事務局次長・上席研究員) 奈良での選挙応援演説中に凶弾に斃れた安倍晋三さんの事件の背景に、銃撃した容疑者の家庭環境があることが明らかになってきています。一家離散の原因となった宗教団体・旧統一教会(現・家庭連合)への過剰な宗教献金、いわゆる「宗教二世」問題です。 一国の元総理が白昼堂々暗殺されるという凄惨で衝撃的な事件があったことで、特定の宗教や信仰そのものが否定されることは望ましくありません。容疑者にいかなる背景があったとしても、その出自、地域、人種、勤務先などの属性で一概に非難をすることは危険です。仮に今回のバックグラウンドに宗教問題があったとしても、それと認めて家庭連合(統一教会)を指弾することは、テロを起こし、安倍さんを銃撃した容疑者の願望を達成することに他ならないからです。 同時に、我が国には政教分離の原則があります。この政教分離原則とは、日本国憲法20
ウクライナ空軍戦闘機も応戦していた。ウォロディミル・ゼレンスキー大統領も米国大統領に戦闘機の供与を依頼していたが、現在までに戦闘機の供与はない。 その代わり、米国は、スイッチブレードやフェニックス・ゴーストなどの自爆型無人機を供与した。 ゼレンスキー大統領は最近では、戦闘機を強く要求していないようだ。 その理由は、ウクライナ軍が自爆型無人機や無人攻撃を多用し、ロシア軍機甲戦力を破壊できているからであろう。 一方、ロシア軍戦闘機の活動も低調になり、無人機の活動が活発になっている兆候がある。 戦史から見て、これまで戦闘機が航空優勢を確保してきた。航空優勢がなければ、地上軍も艦艇も、戦闘機による攻撃に撃破されてしまっていた。 それが今、航空優勢を獲得していなくても、敵の機甲部隊や兵站部隊を狙って攻撃できているのだ。 戦場の様相がこれまでと、大きく変化しているようだ。 ロシア軍の防空システム、戦闘
2011年度に生産が終了した「F-2」戦闘機以降、国内における新たな戦闘機開発事業は途絶えており、次期戦闘機(「F-3」仮称)の開発は戦闘機の国内生産・技術基盤を維持するための重要な機会である。 そして、2018年12月、「中期防衛力整備計画(2019年度~2023年度)」において「我が国主導の開発に早期に着手する」と記載され、次期戦闘機の国産化が決定した。 日本は、F-2の退役・減勢が始まる2035年頃から、F-3の導入を開始する。 次期戦闘機のイメージ 国産でも自国で開発したものを生産する場合もあれば、外国で開発されたものを権利の使用料であるライセンスフィーを払って自国で生産するライセンス生産というものがある。 国内生産・技術基盤を維持・強化するためには国産が最適であることは自明である。 さらに、装備品の国際共同開発・生産という取得手段もある。しかし、日本には、F-2の共同開発について
2010年代の第3次AIブームから除外されたロシアの旧ソ連型軍備がどれだけたくさんあっても西側の敵とならず、この戦争そのものは長期化しない――。 そうした予測を前回稿(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69932)など一連のコラムで、根拠とともに記しています。 ロシアはウクライナ・サイバー戦争に4月時点で「完敗」という、見えない戦争の敗北焦土が仮想空間上にも広がっているわけです。 本稿の公開日、5月3日は「憲法記念日」ですが、今回はウクライナ戦争の中でも日本国憲法第9条で禁止されない「攻撃」を扱ってみましょう。 「国権の発動」として「武力による威嚇又は武力の行使」としては一般の「目には見えない戦争」である「サイバー・ウォーズ」。 このサイバー戦争でも、2022年のロシア連邦が完敗している実情を、やはり背景とともに検討してみます。 読者の皆さんは「ウ
4月4日、ロシア軍による攻撃が続く中、キーウ近郊の町・ブチャを視察したウクライナのゼレンスキー大統領。町では民間人と見られる多数の遺体が見つかった(提供:Ukrainian Presidential Press Service/ロイター/アフロ) (在ロンドン国際ジャーナリスト・木村正人) [ロンドン発]ウクライナ軍の激しい抵抗で、ロシア軍はウクライナの首都キーウからの撤退を終了しつつあり、東部や南部の戦いに集中し始めた。停戦や和平合意によって現在の前線が固定された場合、ロシア軍は再侵攻に備えて部隊を再編成する時間を稼ぐことができる。 西側はウラジーミル・プーチン露大統領の領土的野心を封じ込めるために「戦争恐怖症」を克服する必要がある。いま考えられるシナリオを検証した。 キーウから撤退し始めたロシア軍 『モスクワ・ルール ロシアを西側と対立させる原動力』の著書があるロシア研究の第一人者で、
国連は、「平和のための結集」決議に基づき「緊急特別会期(ESS)」を開催し、平和維持部隊の派遣を含む軍事的強制措置を採択すべきである。 国連総会は3月2日、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて「緊急特別会期/会合(Emergency Special Session:ESS)」を開催し、ロシアに対して軍事行動の即時停止を求める決議案を141カ国の圧倒的賛成多数で採択した。 193の国連加盟国のうち、反対票を投じたのはベラルーシ、北朝鮮、エリトリア、ロシア、シリアの5カ国のみで、棄権は35カ国だった。 日本を含めた90カ国以上が共同提案したもので、決議に法的拘束力はないものの、ロシアに対して「即時に完全かつ無条件で、国際的に認められたウクライナの領土からすべての軍隊を撤退させるよう」強い言葉で要請している。 国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「国連総会のメッセージは強力で明確だ。ウクライナで
(岩田太郎:在米ジャーナリスト) ロシアを20年以上支配してきた69歳の独裁者、ウラジーミル・プーチン大統領が西隣の主権国家ウクライナへの本格的な侵略を2月24日に開始して、1週間以上が経過した。わずか44歳のウォロディミル・ゼレンスキー大統領率いるウクライナ国軍、義勇兵や市民の士気と抵抗意欲は予想以上に高く、準備の足りないロシア侵略軍は苦戦を強いられている。プーチン氏の想定の甘さ、兵站(へいたん)・補給の軽視、不利な情報の無視などが指摘される。 しかし、戦場よりもはるかにロシアが不利な立場にあるのが、情報戦だ。まず、占領・統治を目論むウクライナにおいては、「ロシア軍は解放者だ」とのナラティブが国民に受け入れられず、民心掌握に失敗している。 また、ロシア国内におけるプーチン支持者の結束は固いものの、極めて厳しい国際社会の金融制裁が引き起こす生活苦により、大統領から民心が離れる危機に直面して
ウクライナの首都、キーウの空に残るミサイルの軌跡(資料写真、2022年3月5日、写真:ロイター/アフロ) (数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官) ロシアがウクライナに侵攻を開始して10日以上が経過しました。開戦前、私を含む軍事専門家の誰もが、ウクライナ上空の航空優勢はロシアのものになると予測していました。ウクライナの航空活動はもって数日、早ければ数時間で終了するだろうと予想されていたのです。ところが、ウクライナ空軍は、現在でも活動を継続しています。 もちろん、状況は苦しいようです。ウクライナ政府はNATOに飛行禁止空域の設定を求め、MANPADS(携帯式防空ミサイルシステム)より強力な対空兵器の供与も求めています。真偽の怪しい「キエフの幽霊」(防空戦で多数のロシア軍機を撃墜したとされるウクライナ空軍のパイロット)の噂を否定しないのも、戦意高揚のためでしょう。 それでも現在までのと
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