アンヤ・フッソ(87)<右> 担当ソーシャルワーカーのマレ・ローセンベリと。ローセンベリのことを「心のマレさん」と呼び、彼女主宰のデイケアを心待ちにしている。 Photo : Ota Hiroyuki 現地に行く前は「フィンランドの高齢者は厳しい自然の中、孤高を貫き、孤独死も恐れない」と勝手に思い描いていた。しかし、取材を始めるとあてが外れた。一人暮らしの高齢者たちの話を聞くと「子どもには頼りたくないが、孤独にも耐えがたい」という、日本人とさして変わらない実像が見えてきた。 アンヤ・フッソ(87)は一昨年、63年連れ添った夫のラウリを心臓病で失った。残されたアンヤは途方に暮れた。北欧の長い冬の夜、1人でテレビを見ていると、涙がこぼれてくる。今にも部屋の扉が開き、ラウリがひょっこりと現れそうな幻覚にもとらわれた。 そんな彼女が心を開くきっかけとなったのが、ヘルシンキ市の「コントゥラ多目的サー