タグ

ブックマーク / huyukiitoichi.hatenadiary.jp (134)

  • 共感しない方がよりよい結果を得ることができる──『反共感論―社会はいかに判断を誤るか』 - 基本読書

    反共感論―社会はいかに判断を誤るか 作者: ポール・ブルーム,高橋洋出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2018/02/02メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る他者にたいして共感するのはいいことだと思われている。ひどいめにあった人をみて、強く感じ入り、そのつらさを共有する人は、一般的には善良な人だ。より多くの人がもっと他者に共感するようになれば、他者に暴力をふるったりすることもなくなるのではないかという考えもある。”もちろん、共感には利点があるけれども”、しかし全体を通してみると害も大きい。単純化すれば、それが書の主張となる。 私自身も、かつてはそう考えていた。しかし今は違う。もちろん共感には利点がある。美術、小説、スポーツを鑑賞する際には、共感は大いなる悦楽の源泉になる。親密な人間関係においても重要な役割を果たし得る。また、ときには善き行いをするよう私たちを導くこと

    共感しない方がよりよい結果を得ることができる──『反共感論―社会はいかに判断を誤るか』 - 基本読書
    notio
    notio 2018/02/04
  • 人類の生存圏を脅かす"新しい時空との対決"を描くイーガン最新刊──『シルトの梯子』 - 基本読書

    シルトの梯子 (ハヤカワ文庫SF) 作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2017/12/19メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見るイーガンの新刊、文庫である。ただし原書の刊行は2002年。それはつまり15年間時をあけての邦訳刊行になるわけだ。無名の作家ならともかく、あのイーガンがここまで翻訳されていないということは、それはつまり単純につまらないからなのではないか?? と疑っていたのだけれども、読んでみたらこれが抜群におもしろい書の刊行は時期的にいえば『ディアスポラ』のあと、『白熱光』のまえといったタイミングで、イーガンが異なる物理法則に支配された新宇宙の創造、ハードな世界構築の方へと傾倒していく序章のような立ち位置につけている。データ化された人間たち、死の概念の変化とアイデンティティの同一性への不安、どこまでもハー

    人類の生存圏を脅かす"新しい時空との対決"を描くイーガン最新刊──『シルトの梯子』 - 基本読書
    notio
    notio 2017/12/24
  • 権利闘争、開発秘話、任天堂、伝説のゲームの裏側──『テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム』 - 基本読書

    テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム 作者: ダン・アッカーマン,小林啓倫出版社/メーカー: 白揚社発売日: 2017/11/01メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る今年はゲームとともに歩んだ人生録である『ゲームライフ――ぼくは黎明期のゲームに大事なことを教わった』やセガと任天堂の覇権戦争の裏側を描いた『セガvs.任天堂――ゲームの未来を変えた覇権戦争』などゲームの体験記であったりゲーム業界秘話的ながめっぽうたくさん出たように思うが、その流れに連なるのが書『テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム』、いうまでもなくテトリス戦記である。 僕もゲームボーイでやったり、ガラケーでったり、スマホでやったりと、様々な媒体でテトリスをやってきた。はたからみているとそんなにおもしろそうに見えないのだけど、やってみると意味がわからんぐらいハマってしまう。テトリスはそんな

    権利闘争、開発秘話、任天堂、伝説のゲームの裏側──『テトリス・エフェクト―世界を惑わせたゲーム』 - 基本読書
    notio
    notio 2017/12/17
  • 魔法と芸術そのものである、書物についてのファンタジィ──『図書館島』 - 基本読書

    図書館島 (海外文学セレクション) 作者: ソフィア・サマター,影山徹,市田泉出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/11/30メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る書『図書館島』はソフィア・サマターの第一長篇にして書物についてのファンタジィ/幻想文学なのだけど、これがもう異様という他なく魅惑的な描写が連続し、ただひたすらこの世界に、この言葉に浸っていたいと思わせる傑作だ。こんなものを第一長篇で書いちゃってどうすんのこの先というぐらいだけど、きっとまだまだ、別方向の物語で驚かせてくれるのだろうと、それだけの懐深さを感じさせる作家である。 物語の主な舞台となるのは複数の国々からなるオロンドリア帝国と、「紅茶諸島」と呼称される島々。語り手であるジェヴィックは紅茶諸島の中でも裕福な農園の跡継ぎ息子だ。紅茶諸島に住まう民が使う言語であるキデティ語は文字を持たないが、ジ

    魔法と芸術そのものである、書物についてのファンタジィ──『図書館島』 - 基本読書
    notio
    notio 2017/12/03
  • なぜ、地球に巨大人型ロボットが埋められていたのか?──『巨神計画』 - 基本読書

    巨神計画〈上〉 (創元SF文庫) 作者: シルヴァン・ヌーヴェル,加藤直之,渡邊利道,佐田千織出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/05/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る巨神計画〈下〉 (創元SF文庫) 作者: シルヴァン・ヌーヴェル,加藤直之,渡邊利道,佐田千織出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/05/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るある時、アメリカで全長約6.9メートルの巨大な手と、謎の記号が記されたパネルが発見される。16枚からなるパネルは、縱橫の長さは3メートル×9.8メートル。それらは、放射線炭素年代測定によると3000年前に作られた物だと考えられる。 そのうえ"手"はイリジウムという特別密度が高く、地球ではほとんど手に入らない(年間の採掘量はわずか4トンしかないレアメタル)珍しい金属で構成されている。

    なぜ、地球に巨大人型ロボットが埋められていたのか?──『巨神計画』 - 基本読書
    notio
    notio 2017/05/20
  • 魔術世界×プログラマ×中東──『無限の書』 - 基本読書

    無限の書 (創元海外SF叢書) 作者: G・ウィロー・ウィルソン,引地渉,鍛治靖子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2017/02/27メディア: 単行この商品を含むブログ (3件) を見る飛び抜けた海外SFが現れたものだ。世界幻想文学大賞を受賞した書は、中東の専制国家である〈シティ〉を舞台として、若きプログラマが世界を変えうる力を持つ書を手に入れてしまい、大きな騒動に巻き込まれていくSFファンタジィである。 中東を舞台にしたSF 中東を舞台にしたSFは珍しく、まずそれがおもしろい。 中東での女性の地位の低さの問題。宗教的なものから風刺的なものまで徹底的なネットへの監視体制を敷くことができる検閲局の技術力と、まともな郵便システムさえも整っていない伝統と革新がごた混ぜになった状況。血縁をめぐる問題、西洋への意識──などなど、中東でなければ出てこない問題意識がてんこ盛りで、それが見事

    魔術世界×プログラマ×中東──『無限の書』 - 基本読書
    notio
    notio 2017/03/07
  • 飛浩隆、十年ぶりの短篇集──『自生の夢』 - 基本読書

    自生の夢 作者: 飛浩隆出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2016/11/26メディア: 単行この商品を含むブログ (5件) を見る『ラギッド・ガール』から10年ぶりに飛浩隆さんの短篇がになった(文庫化除く)。 一言でいえば極上のSF短篇集である。身体へとダイレクトに感覚が伝達され、SFならではの特異なイメージが現出する悪魔的な表現力はなお健在。書で描かれる新しいタイプの"天才"の造形も素晴らしく、読んでいて何度も表現とストーリーの両面、その凄まじさに感嘆するというよりかは恐れおののいてしまった。 漫画HUNTER×HUNTER』には、瞬間的に成長したゴンさんが強敵・ネフェルピトーの頭を打ち砕くシーンをキルアが目撃し、「どれほどの代償を払えば これだけのオーラを…!!」と絶句する場面があるのだが、まさにそんな感じのリアクションを読みながらしていた(どれほどの代償を払えば こ

    飛浩隆、十年ぶりの短篇集──『自生の夢』 - 基本読書
    notio
    notio 2017/01/29
  • 凄まじい才能のデビュー作──『ヒュレーの海』 - 基本読書

    ヒュレーの海 (ハヤカワ文庫JA) 作者: 黒石迩守,Jakub Rozalski出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/11/22メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る数ページ読んで即、「圧倒的に凄い」と思ったし、別の言い方をすれば「これは新しい!」と思った。とはいえ、要素要素が"新しい"わけではない。ニューロマンサーの流れを汲み、ロボ戦闘はまるでアーマードコアのような迫力で、哲学宗教から神秘主義まで無数の概念を持ち出して生命起源から序列のある架空国家を含めた独自理論/世界を築き上げていく様は、型月作品に近い作品性(≒新伝奇性?)を感じさせる。 いわばサイバーパンクアーマードコア伝奇SFという感じで*1、新しいと思ったのは、そんな混ざりそうもない要素が奇跡の融合を果たして、奔流のように押し寄せてくること、それ自体についてである。とっつきづらいサイバーパンクを現代の

    凄まじい才能のデビュー作──『ヒュレーの海』 - 基本読書
    notio
    notio 2016/12/15
  • 異なる物理法則を持つ宇宙があったなら、そこでは何が起こるのか?──『エターナル・フレイム』 - 基本読書

    クロックワーク・ロケット (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) 作者: グレッグイーガン,山岸真,中村融出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/12/18メディア: 単行この商品を含むブログを見る我々の世界とは異なる物理法則を持つ宇宙があったなら、そこでは何が起こるのか? こんな単純といえばあまりに単純な発想を突き詰めて、「知的種族の存亡を賭けた死に物狂いの"知的探求"」と、それによる「この宇宙ならではの無数の科学革命」を描いたのが『クロックワーク・ロケット』からはじまるイーガンの〈直交〉三部作である。某大ヒット映画監督に「年々難解になっていく」と言われてしまったイーガンだが*1、作はたしかにこれまででもっともハードで──同時に今僕がもっとも続刊を楽しみにしているぐらい、"純粋におもしろい"シリーズ作品だ。 以下『クロックワーク・ロケット』から基的に未読者向けに紹介していく。 簡

    異なる物理法則を持つ宇宙があったなら、そこでは何が起こるのか?──『エターナル・フレイム』 - 基本読書
    notio
    notio 2016/09/05
  • 高層住宅で発生する壮絶な階間闘争──『ハイ・ライズ』 - 基本読書

    ハイ・ライズ (創元SF文庫) 作者: J・G・バラード,村上博基出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/07/11メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見るバラードの代表作の一つと言われるこの『ハイ・ライズ』。 もともとは早川で出ていたものが、書を原作とした映画が8月に日で上映されることもあって創元SF文庫から解説も新たに付して出し直された。訳は多少の手が入れられてはいるものの、作品内容に関わる大きな修正点はないとのこと。 舞台となるのは1000戸が入居する40階建てのマンションだ。内部には小学校もレストランもマーケットも存在し、生活が完結できるほどの実験的な巨大住宅であるが──ある時高層住民の犬がプールで溺死させられ、その後連鎖的に階層間で暴力沙汰が頻発するようになり──とマンションは混沌極まりない状況へと陥っていく。 40階建ての巨大住宅書刊行の1975

    高層住宅で発生する壮絶な階間闘争──『ハイ・ライズ』 - 基本読書
    notio
    notio 2016/07/15
  • 人類進化に関するまったく新しい疑問とアプローチ──『人類進化の謎を解き明かす』 - 基本読書

    人類進化の謎を解き明かす 作者: ロビン・ダンバー,鍛原多惠子出版社/メーカー: インターシフト発売日: 2016/06/20メディア: 単行この商品を含むブログを見る考古学者は石器と化石の組み合わせや、発掘地の地質学によって「歴史」を浮き彫りにさせてきた。書『人類進化の謎を解き明かす』の特徴は、そうした石と骨「だけ」に頼るやり方を捨てているところにある。もちろんまったく援用しないわけではなく、「考古学的記録を新たな目線で見つめること」に重点を置いているのだ。 著者のロビン・ダンバーは人間にとって平均約150人が安定して関係を持てる数であるというダンバー数の定式化を行った人物だが、その来歴を活かすように、書では人類進化の社会的側面と認知基盤に光を当て人類の進化史を洗いなおしている。僕も専門家ではないからこのアプローチがどれだけ有効なのか疑問に思うが、いくつかの専門的な書評を読む限りで

    人類進化に関するまったく新しい疑問とアプローチ──『人類進化の謎を解き明かす』 - 基本読書
    notio
    notio 2016/06/21
  • 剣のように強い力を持った本の記録──『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』 - 基本読書

    戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊) 作者: モリー・グプティル・マニング,松尾恭子出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2016/05/30メディア: 単行この商品を含むブログ (1件) を見る紀元前から人類は図書館と共にあったが、それは場所が戦地にあってもかわらない。人はいかなる時であっても──というよりかは、過酷な状況にあってこそ書籍を求めるのかもしれない。 書『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』は「第二次世界大戦時に、強いストレスに押しつぶされそうになっている兵士たちの心を癒やすため、海を渡って兵隊らに行き渡った書籍」についての歴史である。この運動は市民や図書館といった多くの人の手によって集められたに加え、兵隊が持ち運びをしやすいように、兵士専用にあつらえられた兵隊文庫がつくられることでの形態も変化させていった。それは後の出版文化にも大きな影響を与えていくこと

    剣のように強い力を持った本の記録──『戦地の図書館 (海を越えた一億四千万冊)』 - 基本読書
    notio
    notio 2016/06/13
  • 孤独を受け入れるか、それとも外へ探究の旅へ出るか──『五〇億年の孤独:宇宙に生命を探す天文学者たち』 - 基本読書

    五〇億年の孤独:宇宙に生命を探す天文学者たち 作者: リー・ビリングズ,松井信彦出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/03/24メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る太陽系は現代から45億年〜46億年ぐらい前にできたのではないかと想定されている。つまるところ書が五〇億年の孤独(原題もそう)──と題されているのは、4〜5億年ぐらいサバをよんで、キリが良い50億年間人間はこの宇宙で孤独だった! とアピールするためのものかとおもいきや、現状の観測からするとあと5億年もすれば生物のほとんどは死滅してしまう=50億年で文明が滅亡する事実からきている。 滅亡するといっても、太陽が燃え尽きるまでは何十億年もある。だが、地球の内部が冷えると火山活動が低下し、大気中に出てくるCO2が減る。同時に太陽は光が強まっていくから水蒸気が増え岩石が風化し、CO2はさらに減る。その結果

    孤独を受け入れるか、それとも外へ探究の旅へ出るか──『五〇億年の孤独:宇宙に生命を探す天文学者たち』 - 基本読書
    notio
    notio 2016/04/06
  • 確かに長文を書くにはかなり良い──『考えながら書く人のためのScrivener入門 小説・論文・レポート、長文を書きたい人へ』 - 基本読書

    考えながら書く人のためのScrivener入門 小説・論文・レポート、長文を書きたい人へ 作者: 向井領治出版社/メーカー: ビー・エヌ・エヌ新社発売日: 2016/03/18メディア: 単行(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る書はScrivenerという執筆ツールを紹介した一冊である。ようはテキストエディタなので、そんなもの書ければなんでもいいやという人にはどうでもいいわけだが、なんでもよくないぜという人にはこれがなんでもよくないものなのである。毎日たくさん書いているとちょっとの使いづらさが作業効率に大きな悪影響を与えるものだし、視認性の悪さなどはそのまま出来上がるものの質にまで関わってくる。 この文章はScrivenerを使って書いているのだが、書を使って──というよりかは書が出版されるのを知って、こんなが出るぐらいだからさぞや良い(けど複雑な)ツールなのだろうと思って

    確かに長文を書くにはかなり良い──『考えながら書く人のためのScrivener入門 小説・論文・レポート、長文を書きたい人へ』 - 基本読書
    notio
    notio 2016/03/20