痴漢にあった女子中学生が、保健の先生から、次は安全ピンで刺すよう教えられたという漫画がTwitterで拡散し、話題になっている。この議論は10年ほど前にエジプトで沸騰した問題である。エジプトでも女性に対する路線バスでの痴漢が社会問題となり、痴漢行為に対してピン(待ち針)やナイフで応酬する女性を描いた社会派映画『678』が2010年に公開され、欧州でも紹介された。性的な問題を表沙汰にすることを嫌うイスラム社会という背景は日本とは異なるが、男性中心社会で痴漢やセクハラに女性が声を上げにくいという点では共通する。 舞台はエジプトの路線バス 映画タイトルの『678』は路線バスの番号であり、カイロ中心部のタハリール広場から郊外の貧しい地域に向かう路線である。主人公のファイザは2児の母で、カイロ中心部の庁舎で働く下級公務委員。エジプトの下級公務員は月給1-2万円の低所得層であり、学校での支払いが滞納し