『哲子の部屋』『ブレイブ 勇敢なる者「硬骨エンジニア」』など、独自の切り口のテレビ番組を企画・制作するNHKエデュケーショナルの佐々木健一氏が展開するコンテンツ論の第29回。今回は佐々木氏が企画・制作したNHKのドキュメンタリー特番『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズ第2弾「えん罪弁護士」に登場する今村核弁護士の“本当のすごさ”について。 今年4月にオンエアし、大きな反響を呼んだBS1スペシャル『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズ第2弾「えん罪弁護士・完全版」。放送後にいただいた感想で特に言及されたのが、番組の主人公・今村核(いまむら・かく)弁護士の書斎を映したシーンについてだった。 「まあ、可哀想な本は、いくつかあるんですけども……」 まるで我が子を慈しむように、弁護士を志した頃に貪(むさぼ)るように読んだ刑事司法に関する愛読書を手に取る。背表紙ははがれ、テープでつぎはぎだらけの修復が施されてい