囲者とは、妾のこと。たんに「囲い」や、「てかけ」ともいう。 図1は、画中に「志賀山、囲われている所」とある。 吉原の花魁(おいらん)志賀山が年季の途中、富裕な商人に身請けされ、囲者となって暮らしている様子である。 左の女中が言う。 「お茶を入れ、おまんまにいたしましょう」 「なんぞ、おいしい物はないかえ」 志賀山は本を読みながら、のん気なものだった。 戯作『磯ぜせりの癖』(十返舎一九著、文化10年)の設定では、志賀山は女中ひとりと、下女ふたりの四人暮らしだった。 左の台所で仕事をしているのが下女のひとりであろう。 身請けに大金がかかったのは言うまでもないが、妾宅を維持していくのにもかなりの金がかかる。 旦那である商人は、まず戸建ての借家を借り、三人の奉公人を雇い、さらに月々の生活費も渡さねばならない。かなりの出費だった。 かつて、「妾は男の甲斐性」という言い方があった。逆から言えば、甲斐性