「A列車で行こう」「或る列車」「かわせみ やませみ」――。ユニークなネーミングと車体のデザインが目を引くJR九州の観光列車は国内外の幅広い世代から人気を集めている。いまや日本各地の鉄道会社が同社を「お手本」として観光列車を導入する例が見られる。 その嚆矢(こうし)となった特急「ゆふいんの森」が今年3月、デビューから30年を迎えた。丸みを帯びた前面とメタリックな緑の車体色、木材を用いた品のある内装。ヨーロッパの高原列車を意識した独特な姿は、年を重ねて一層深みのある雰囲気を醸し出している。 JR九州の「顔」 2018年7月、豪雨による被害の後、久大本線が約1年ぶりに全線復旧した際の記念セレモニーを盛り上げたのもこの列車。ゆふいんの森はJR九州の歴史を語るうえで、欠かすことのできない同社の「顔」となっている。 ゆふいんの森は毎日3往復を運行する花形の観光列車だ。下り列車は博多駅を出発して鹿児島本