(左右社・1870円) 地方の半沢直樹の「仁義なき変革」 テレビドラマ「半沢直樹」シリーズが7年ぶりに復活し、しかも前回同様に高視聴率だという。「改革」だの「イノベーション」だのと騒がれたこの7年間、日本社会のしょうもない構造が変わらなかったことを、まるで象徴しているようではないか。 半沢直樹の、水戸黄門よろしく「構造にまでは切り込まない勧善懲悪」に、今一つ惹(ひ)かれない方。ぜひ『マル農のひと』を読んでほしい。実話であるにもかかわらず、本当の痛快感を味わうことができるだろう。広島弁丸出しのおじいちゃんを、都会在住の女性ライターが自筆イラストや素人解説付きで軽妙に描くというスタイルも、たいへんに後味が良い。 主人公の道法(どうほう)正徳さんは、お坊さんではなく、瀬戸内の小島のミカン農家だ。大学を出て農協に入り、定式化された栽培法を農家に教えていたが、それではかえっておいしい実が生(な)らな