私は以前学生の頃、韓国の留学生と話していた時、この『アリランの歌』をぜひ読んでほしいと勧められたことがあった。そのころ手ごろに入手できなかったためか、長い間読まずにきた。 しかしこの度手にとってみて、これまで読まずにきたことが悔やまれる。そのとき彼がどんな気持ちで「読んで見てくれ」と話したのか、その気持ちをいまさら考えてしまうのである。 本書は、アメリカ人ジャーナリストのニム・ウェールズ(エドガー・スノーの元妻)が、中国革命の聖地延安に乗り込んでいたとき、偶然に巡り合った朝鮮革命の闘士の身の上話を聞き、それを克明に書き留めたものである(こんな所にもアメリカ人ジャーナリストたちの底力を見るべきだろう)。キム・サンというのはその闘士の偽名(のひとつ)である。 1919年3・1独立決起の時、キム・サンはわずか14歳の中学生だった。キリスト教系の学校に通っていたのだが、先生が突然ウィドロウ・ウィル