まずは入手した関係から『四畳半襖の下張り』に連なるポルノグラフィを挙げてみる。 本連載85で取り上げた日輪閣の『秘籍 江戸文学選』の監修者にして校注者の山路閑古は、ポルノグラフィ出版人脈の中にあっても、共立女子大教授の肩書ゆえか、岩波新書の『古川柳』や筑摩叢書の『古川柳名句選』が出され、小出版社に集った人々が多い中ではよく知られているほうだろう。 (ちくま文庫版) 『古川柳』の奥付経歴を見ると、一九〇〇年静岡市生まれ、二五年東京帝大理学部卒業、川柳を阿井久良伎、俳句を高浜虚子、俳諧を根津芦丈に学ぶとある。また『古川柳』の記述によれば、以前に『古川柳』と題する雑誌も自ら刊行していたようだ。 山路による「古川柳」の定義を示しておくと、これは江戸中期の雑俳前句付の点者の柄井川柳によって創始されたもので、俳句と同じ十七音字の詩だが、季題の制約はなく、「や」「かな」といった切れ字もつかわず、自由自在