<テレワークの進展によって郊外に転居した人がいるのは確かだろうが、そうした「前向き」な理由での転出はむしろ少数派と見るべきだ> 東京23区が転出超過になったことが話題となっている。テレワークが普及し、都心から人が出ていく動きが加速しているとの解釈が一般的だが、統計をより細かく見ると、そうではない可能性が高い。筆者はかねてからテレワークを推奨してきた立場だが、願望が先走ってしまうと実態を見誤る。 総務省が発表した2021年の住民基本台帳の人口移動報告によると、東京23区の転出超過は1万4828人となり、現在の統計になってから初めて転出が転入を上回った。各種メディアには「東京一極集中の是正が進む」「テレワークの進展で田舎暮らしが現実に」といった見出しが並んだが、これは実態を表していない。 確かに23区は転出超過だが、東京都全体では5433人の転入超過。さらに東京圏に視野を広げると8万1699人