ことし2月、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻から1年がたったころ、私のスマホにメッセージが届いた。 「あなたのためにウクライナのアクセサリーとハーブティーを買ったの。届けるにはどうしたらいい?」 彼女はウクライナ人。去年3月、私が隣国のモルドバでの取材中に知り合って、同世代ということもあって今もときどき近況を報告してくれる。 彼女と初めて会ったとき、私たちはロシア語で話していた。でも今は互いに英語しか使わない。 ウクライナでの取材中に目にした貼り紙が忘れられない。 ロシア語は使いません。ロシア語は「血の匂い」がする言葉だから。 学生時代に多くの時間をかけて学び、あれほど好きだったロシア語を使うのが、私は今でも少し怖い。 不思議の国に近づきたくてロシア語が好きだったといっても別にロシア文学のファンじゃない。何しろドストエフスキーすら読んだことがない。「それでもロシア語の学習者?」と言われそ