人生に悩んだ時に手に取った本 書き手の世界に私を引き戻してくれた本を挙げました。 私はいま3度目の人生を生き直しています。新聞記者から仕事を始め、その後、プロ野球の球団経営に関わりましたが、新聞界のドンの非を訴えて、一大企業グループ対個人の長い戦いに陥りました。 どう生きていくのかと悩んだ時、手に取った本は以前読んだノンフィクションやルポでした。 1位の『サイゴンの十字架』は、開高健の文章の見事さだけでなく、死に物狂いで戦争を書くとはこういうことだ、と読む者を打ちのめします。 〈翌朝、ヘリコプターがやってきて、それに乗って空にあがったとき、地上に寝たり、しゃがんだりしている政府軍兵たちのこちらを見あげる小さな顔がいくつも見え、それを見おろした瞬間、死地を脱した歓喜で胴ぶるいがでそうになっている私にやましさの意識が裂くようにおそいかかって去っていった〉 こんな一節を読むと、怒ったり嘆いたりし