順天堂大学大学院医学研究科・公衆衛生学講座の野田愛准教授、谷川武教授らの研究グループは、福島原子力発電所員のメンタルヘルスについて追跡調査を実施し、災害関連体験*1と心的外傷後ストレス反応(PTSR:posttraumatic stress response)*2との間に因果関係があることを明らかにしました。本研究で、原発事故の災害関連体験によるメンタルヘルスの不調は時間とともに回復することがわかりましたが、「差別・中傷などの社会批判によるPTSR」は、3年経過してもなお、非常に強く残ることが認められました。これらの結果は、災害後における支援策の具体的な改善に役立ちます。本研究は、英国の医学雑誌「Psychological Medicine」に掲載されます。 本研究成果のポイント災害関連体験が原因となり、メンタルヘルスに不調が生じることを証明災害関連体験によるメンタルヘルスの不調は時間とと
原発の重大事故で、西日本の大半が避難を余儀なくされる――。そんな計算結果が、ひそかに関心を集めている。日本の原発が舞台ではない。海を挟んだ隣国、韓国での原発事故を想定した話だ。 韓国人の学者が警鐘 シミュレーションをしたのは、韓国人の核物理学者で現在、米ワシントンのシンクタンク「天然資源防衛委員会」(NRDC)の上級研究員を務める姜政敏(カン・ジョンミン)博士(51)ら。カン博士が昨年10月末に韓国で発表し、その後も日韓での核問題関連の集会で警鐘を鳴らしている。国際会議で来日したカン博士に話を聞いた。 カン博士らがシミュレーションの舞台に選んだのは、韓国南東部、釜山市の海沿いにある古里(コリ)原発だ。古里は、軍出身の朴正熙(パク・チョンヒ)独裁政権時代の1978年に1号機が完成した韓国最古の原発。韓国内で商業運転する25基のうち7基が海沿いに並ぶ、韓国最大規模の「原発銀座」だ。 ここでは原
東京電力福島第1原発事故による避難指示が帰還困難区域を除いて4月に解除される福島県富岡町で、町職員が長距離通勤に不安を抱いている。町内の本庁舎での業務が6日に再開。仮役場のある福島県郡山市周辺に生活拠点を移した多くの職員が通う。郡山-富岡間は車で片道約2時間。町は6日から通勤バスを運行するが、職員からは「いつまで体が続くか」といった声が出ている。 町によると、町職員は全体で約140人。現在の郡山勤務者ら新たに約90人が4月から町内勤務となる。郡山-富岡間は国道288号など一般道で90キロ前後、常磐自動車道などを利用するルートで約130キロ。通勤バスは渋滞の少ない一般道を走る計画だ。 約90人全員が乗車できるよう、町は大型2台の運行をバス会社に委託。悪天候を想定し、マイカー通勤者も乗車可能にする。所要時間は三春町での停車を含め片道2時間20分。富岡行きは午前6時に町役場郡山事務所を出発する1
福島の放射線の量を正しく理解してほしい 現地に足を運んでデータを積み上げた科学者、早野龍五さんに聞く 早野龍五 東京大学教授 2011年3月、福島第一原発の異変を感知した直後からツイッターによる情報発信を始めた東京大学理学部教授の早野龍五さんは、この3月に東大を定年退職する。現地に足を運び、「福島県南相馬市での給食検査」「ホールボディーカウンターによる内部被曝(ばく)調査」「乳幼児専用の検査装置(ベビースキャン)導入」など、さまざまな取り組みに身を投じてきた。6年間を振り返り、復興に寄せる思いを聞いた。(聞き手・伊藤隆太郎) ――なぜ先生は福島にかかわってこられたのでしょうか。 自分の専門は、原子物理学です。この20年間、ジュネーブのセルン(欧州合同原子核研究所=CERN)で、物質と反物質の対称性について研究してきました。これまで仁科記念賞なども頂戴し、学界ではそれなりの評価は受けてきまし
東京電力福島第1原発事故で避難を強いられた人たちが、避難先で新居を構える動きが広がっている。避難先での定住を決めてもふるさとへの思いはつのり続け、「いつか帰還を」と考えて福島と避難先それぞれに生活拠点を持ち続ける人もいる。放射能に対する不安と故郷への愛着。避難者の胸に複雑な思いが交錯している。【大久保昂】 【震災の傷痕ではない】被災地に新しい風景が出現 ◇「処分悩ましい」 福島県浪江町の菅野昭雄さん(66)は3年前、避難先の兵庫県三木市に家を新築した。故郷の家は、立ち入りが制限されている帰還困難区域にある。「放射能のことを考えたら、孫を呼び寄せるのも難しい」。帰還は半ばあきらめている。 浪江の家は、江戸時代から一族の歴史を刻んできた建物だ。福島を離れて大阪で仕事をしていた約10年前に相続し、「ついのすみか」にしようと大規模リフォームを施した。妻みずえさん(64)が先に移り住み、自身も
東京電力福島第一原発事故の帰還困難区域のうち、5年後をめどに国の避難指示が解除される「特定復興拠点」の面積は5%程度にとどまる、との試算が明らかになった。被災自治体はより広い面積を求めるとみられるが、国は予算の制約に加え、多くの住民の帰還は見通せないと慎重だ。将来復興庁が廃止された後、面積が広がるかどうかも見通せない。 帰還困難区域は原発事故の影響で放射線量が年50ミリシーベルトを超えた地域。福島県の7市町村にまたがり、対象人口は約2・4万人。現在も立ち入りが制限されている。 政府は同区域にわずかでも住民が戻る拠点を設け、2022年をめどに避難指示を解除する方針。災害公営住宅などの建設だけでなく、他地域では東電が負担する除染も税金を使う。拠点は今秋から順次決まる。 決定を前に、復興庁は20年度までの4年間で使える復興予算(福島県外も含め4・6兆円)を基本に、帰還が見込まれる住民の数や、農地
政府は、東京電力福島第一原発事故で福島県内の4町村に出した避難指示を3月31日と4月1日に一斉解除する。対象は約3万2千人。事故直後に11市町村約8万1千人に出されていた避難指示は、対象区域の約7割で解除され、今後は5年後をめどにした「帰還困難区域」の一部解除に焦点を移す。 浪江町は27日、政府が提案していた3月31日の解除の受け入れを決めた。政府は近く解除を正式決定する。これにより、3月31日に浪江町、川俣町、飯舘村、4月1日に富岡町の避難指示が解除される。対象者は計約3万2千人。 2011年3月の事故後、政府は福島県の11市町村約8万1千人に避難指示を出した。これらは12~13年に「帰還困難区域」と、帰還をめざす「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」に再編された。 政府は15年6月、帰還困難区域以外の避難指示を17年3月までに解除する目標を決め、除染やインフラ復旧を進めてきた。これま
私たちの心の分裂(スプリット)とその克服 精神病理学で「分裂(スプリット)」という用語が用いられることがある。 同じ対象についての矛盾した空想が、私たちの心の中に同時に存在しながらそのことについては無自覚なままであることを指す。 そして、このような「分裂(スプリット)」を抱いている対象については、私たちは一貫性のある現実的な対応を取れなくなってしまう。 「原子力」について、私たちの心の中には、良いイメージ群(系列1)と悪いイメージ群(系列2)が分裂(スプリット)したままで存在している。それぞれのイメージ群の内部の空想上の対象のいくつかは、相互に自動的に結びつき、全体の空気や気分を形作っている。 系列1:「良い原子力」=「強大なエネルギーとそれを保持したい願望」=「国策と伝統の正しさと無謬性」=「経済的な優位性の確保」=「原発事故の否定的な影響、特に放射線による直接的な健康影響の否定」=「帰
「原子力ムラ」批判だけでは変わらない つい「原子力ムラ」という言葉を使い、それに厳しい批判の言葉を投げかけたくなる。 たとえば、賠償や除染・廃炉に今後どのような費用がかかったとしても、結局はそれを電気料として広く国民が負担することになり、電気事業者の権益は確保されるとの指摘がなされている。 そしてそのような方法で維持される経済力を背景に、前述したような原発事故の否定的な影響を小さく見せるようなキャンペーンが展開されているという憶測も行われることがある。 もしそうならば、電気事業者は原発事故によって適切な処罰を受けることなく、かえって影響力を増したことになる。しかしそれは誠に不遜な事態であり、厳しく糾弾しなければならない、そのように考えたくなる。 しかし、精神病理学の立場からは、その思考法を進め、その中に埋没する危険性にも意識的でありたい。「全て良い。問題ない」という感覚を「全て悪い。問題ば
「日本的ナルシシズム」という思考法 筆者は、昨年に『日本的ナルシシズムの罪』という本を上梓し、現代日本に蔓延する病理性について報告した。 そこでは「和を持って貴しとなす」という美徳についての誤解が行われ、狭い仲間内でのみ通用する都合のよい「想像」を共有することが人間関係において過度に重要視されてしまい、その想像と合わない現実を扱うことや、想像を共有しない他者との関係性を構築することがきわめて困難になるという特徴があると記載した。 具体例を挙げた方が分かりやすいだろう。 2011年の原発事故が起きるまで、ほとんどの日本人が共有していた原子力発電についての「安全神話」とそれによって維持されていた日本社会の連帯と安定が、その一つの現れである。 2011年の事故によって明らかになったのは、それが都合のよい想像だったのであり、その想像を強く共有したために私たちが「原子力発電所は事故を起こすかもしれな
ある老医師の「戦死」 2016年12月30日、福島県広野町にある高野病院の高野英男院長が火事で亡くなるという痛ましい事件が起きた。享年81。高野病院は2011年に事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所から22kmの地点にある。 震災後は、病院にただ一人残った常勤医師として休むことなく診療に当たった。元来は精神科医であったため、震災前には一般的な救急患者の受診を受け入れてはいなかった。 しかし、周囲の病院が軒並み休業したため、高野病院が福島県双葉郡において診療を行う唯一の病院となってしまい、震災後には救急車で搬送される患者の受け入れも行うようになった。年間の当直回数が100回を超えたこともあったという。 生前の高野医師の姿はテレビでも放映され、その過酷な勤務内容と、次第に足腰が弱りテレビの前で転倒してしまうような姿も、全国で知られるところとなった。 しかしながら、その負担が大きく軽減され
除染廃棄物、30万立方メートル=JR常磐線の浪江-竜田間-仮置き場確保、課題に JR常磐線の線路沿いに置かれた除染廃棄物=7日、福島県富岡町 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響で一部区間が運休しているJR常磐線をめぐり、復旧に向け行われている浪江(福島県浪江町)-竜田(同県楢葉町)間の除染作業で、土などの廃棄物が30万立方メートル程度発生することが10日、分かった。政府関係者が明らかにした。東京ドームの4分の1に相当する量で、2020年春を目標とする全線再開には、仮置き場の確保が課題となりそうだ。 常磐線は浜吉田(宮城県亘理町)-相馬(福島県相馬市)間と、小高(福島県南相馬市)-竜田間が現在も不通となっている。 このうち浜吉田-相馬間は12月に、小高-浪江間は17年春に再開する予定。両区間では、線路の下に敷くバラスト(小石)や土壌を入れ替えたり、線路沿いの草木を刈り取ったりす
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く