真の立憲主義を守る国家の責任 ようやく冒頭の話に戻るが、左派系各紙の憲法記念日の紙面に私が落胆したのは、それらが、この物理的(生命・健康)にも経済的(営業規制)にも切迫した危機に直面した状況のなかで、あえて「ジェンダー」という観点から「承認(アイデンティティ)の政治」を前面に押し出し、「再分配の政治」を軽視しているからなのだ。 もちろん、コロナ下での若年女性の自殺の急増など、明らかに社会のジェンダー構造に起因する深刻な問題が存在しているのは、よくよく理解しているつもりだ。しかし、ジェンダー構造のような広く深く浸透した社会文化的意味秩序は一挙・全面的に改訂できるものではない。 それは粘り強く長い時間をかけて丁寧に解決されるべき問題なのである。コロナ下においてジェンダーをことさらに重視するのには、いまにも死にそうな重症患者に「普段から食事を節制して運動とかもやったほうがイイですよ」とアドバイス