メタコミュニケーションのパラドクス (1) (『大阪樟蔭女子大学論集』第30号、1993年3月発行) 入江幸男 コミュニケーションを行うとき、それをうまくするために、コミュニケーション自体についてコミュニケーションを行うことは、我々が日常生活の中でもしばしば気づいていることである。このコミュニケーションについてのコミュニケーションを、メタコミュニケーションと呼ぶことがある。小論では、まずメタコミュニケーションとは何かを検討し、次にメタコミュニケーションに特有のパラドクスを分析して、最後にそれらのパラドクスがコミュニケーションの成立にとって重要な働きをしていることを指摘したい。 第1章 メタコミュニケーションとは何か。 第1節 メタコミュニケーションの広がりと重要性 我々がコミュニケーションを行うときには、コミュニケーションの進め方についての合意がなければうまくゆかないし、