2010年以降のいわゆる第三次AIブームが超人間的・超知性的なものを欲望しているとして批判する一冊。第三次AIブームにおけるシンギュラリティ仮説やトランスヒューマニズムは、機械と生命との区別を見失った考え方に過ぎない、と著者は指摘する。 本書の論においては、生命が本質的に自律的であるのに対して機械は他律的でしかありえない。生命は想定外の事態に対して自己決定が可能(自律系)だが、AIを含むすべての機械の判断はあらかじめ想定された方向づけをなぞっているに過ぎない(他律系)からだ。これはいわゆる「フレーム問題」として知られているが、いまだに解決されていないという。 記号論理学に基づき誤りが少ない代わりに応用範囲の限られる「記号計算モデル」が軸になっていた過去の第一次AIブーム、第二次AIブームとは異なり、現代の第三次AIブームでは「ニューラルネットモデル」が中心となり飛躍的に応用範囲が広がった。