この最終40巻には見開きの2ページを丸々使ったカットが三箇所ある(三箇所しかない)のだが、まずはそこから話を広げていきたい。なぜなら、それは古谷野孝雄の『ANGEL VOICE』というマンガにおける感動や説得力が、優れた構成や場面の作り方によって支えられていることの確認になりうるからである。 一箇所目と二箇所目は対になっている。特筆すべきは一箇所目の見開きの2ページであろう。高校サッカー選手権千葉県予選決勝、市蘭(市立蘭山高校)と船和学院の試合は、激しい競り合いの末、とうとうPK戦にまでもつれこんだ。しかし、PK戦でも〈先に蹴る船和学院が決め・市立蘭山がすぐそれに追いつく〉という〈まるで試合の再現を見ているよう〉な展開が繰り広げられ、優劣のつかぬままに5人目の順番がきてしまう。ここで主人公たちのライヴァルである船和学院の5人目を任せられたユゥエル・カールソンのキックが、一箇所目のカットにあ