二十年前に「歌人」という肩書が付いて以降ずっと、「短歌はもう存在しないものと世間一般では思われている」「短歌の居場所ごと一から立ち上げないと短歌は世界にないも同然」と考えてきました。 そんなふうに考えている歌人は案外ほかにほとんどいなくて、(ここで詩的飛躍します)、私は最近『職業としての小説家』を出した村上春樹さんのことが以前ほど嫌いではなくなってきました。そして『職業としての歌人』という本を書く歌人がいるとしたら枡野浩一だろうと思いました。私より稼いでいる歌人は当然いると思うけれど、そんな歌人は書かなそうでしょ? 短歌をつくる若者たちを主役にした小説『ショートソング』(集英社文庫)は、私の実力以外の要素に恵まれて10万部ほど流通して漫画化もされましたが、歌壇で話題にされたことはほぼないし、ハンパなヒットと言われればそうかもしれません。数え方にもよりますが40冊ほどの本を出してきました。そ