バスやタクシーなど運輸業界で働く運転手の過労防止策が後退の危機に瀕(ひん)している。勤務終了から翌朝の勤務開始までの休息時間について、「11時間」の国際基準に会社側が抵抗したことから、厚生労働省が「9時間」に縮める案を示しているためだ。運転手の過労による事故が増える中、識者は「乗客らの安全が確保できない懸念がある」と同省の対応を疑問視する。(池尾伸一)
運転席の真後ろの席に座っていた男子高校生が亡くなったのは、1年前の10月28日である。横浜市のJR桜木町駅近くの交差点付近で衝突事故を起こした路線バスに乗っていた。16歳、死因は脳挫傷。一緒に乗っていた母親も全治約1年の重傷だった。被告の運転手を裁く刑事裁判で、母親は「息子が生きるはずだった年月と同じくらい、被告人には刑務所に入っていてほしい」と訴えた。その被告は「神経反射性失神」であり、運転中に意識を失っていたことも公判では明らかになっている。業務の過酷さが指摘される路線バス運転手。その健康管理を担うはずの会社側は、この疾病を把握し、配慮していたのだろうか。(文・写真:本間誠也/Yahoo!ニュース 特集編集部)
バス運転手の不足を受け、京都市交通局が2018年度に始めた大型自動車第2種免許未取得者の採用に課題が生じている。若者も積極的に取り込もうと、教習所での免許取得費約50万円を公費負担しているが、同年度に採用した39人のうち、1割超の5人が1年未満で退職。「運転手として自信をなくした」との声もあり、職場定着支援が求められそうだ。 バス運転手になるには大型2種免許が必要で、普通免許取得から3年以上経ていることが条件だ。しかし、近年は労働時間が長く年間所得が少ないといった背景から新規取得者が減り、保有者数は減少傾向にある。運転手の高齢化も進み、バス事業者は人材獲得が急務で、未取得者の採用が広がっている。 市交通局も同免許取得済みを条件にした長年の採用方式に加え、未取得者対象の採用を始めた。試験は17~18年度に3回実施し、18年度内に計39人を採用したが、5人が1カ月半~10カ月で退職した。「運転
全国のバス事業者が運転手を募集するなか、運転手の勤務のあり方へ懸念の声も聞かれます。その実態はどうなっているのでしょうか。なかでも長距離を運行するのが高速バスですが、その乗務シフトの体制はかなり多様です。 路線距離に応じて「日帰り」「泊まり」など バス運転手の不足が顕在化するなか、「長時間勤務」「不規則なシフト」といった乗務形態についての報道がしばしば見られます。なかでも、一般的な路線バスより長い距離を運行する高速バスにおいては、実際どうなっているのでしょうか。 拡大画像 バスタ新宿に停まる伊那バスの飯田行き。新宿~飯田線は「ワンマン日帰り」乗務が原則(2019年7月、成定竜一撮影)。 高速バスには、運転手がひとりで運転(ワンマン運行)する路線、ふたりで交替しながら運転(ツーマン運行)する路線、途中で乗り込む別の運転手に交替(乗り継ぎ運行)する路線などがあり、運転手の勤務も「日帰り」「泊ま
「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。 これまでに、一般ドライバーからは一見すると「マナー違反だ」と思われてしまうトラックドライバーの行為の理由を紹介してきたが、今回は「高速道路の深夜割引がもたらすトラックの迷惑駐車と長時間労働」について紹介したい。 高速道路の深夜割引は、自動料金収受システム(ETC)を利用したクルマが、午前0時から午前4時までの時間帯に高速道路を走行した場合、高速料金が3割引になるサービスだ。無論トラックだけではなく、他車両も利用できる。 例えば、東京から大阪(吹田)まででかかる大型自動車の高速通常料金は、約17,500円。これが深夜割引を利用すると約12,200円となり、5,000円以上高速代が浮く。 「配送料無料」の時流や、競合他社との価格競争に対応するべく、安い運賃が定着化する昨今の運送業界
その乗客は、運転席のすぐ脇で罵声を浴びせ続けてきました。会社に押しかけて来て、大声でどなり続け、謝っても謝ってもずっと謝罪を求めてきました。「またあの人がバスに乗ってくるんじゃないか…」そう思うと、眠れなくなり、乗務できなくなりました。カスタマーハラスメント(カスハラ)は働く人たちの心に大きな傷を残してしまうほどの深刻な被害をおよぼしています。 (ネットワーク報道部記者 和田麻子) 「ブレーキがきついんだよ!」 首都圏のバス会社に勤務する40代の運転手、山本さん(仮名)は乗客から、突然、こうどなられました。これまでもクレームは経験したことがありましたが、運転席のすぐ脇まで来て、しかもどなられるというのは初めてでした。 その乗客は一見、どこにでもいるような中年の男性。ただ、そのあまりのけんまくに、「危害を加えられるかも」と身の危険を感じるほどのものでした。どう対処していいかわからず、とにかく
「最近、バスの本数が減ったなぁ」と感じること、ありませんか。「何をいまさら…」と感じる方もいるかと思いますが、調べてみると、たしかに今、バス業界では大きな異変が起きていました。それも大都市部で。しかも、このままなにも手を打たないでいると、かなり深刻な事態になりそうなんです。 (宮崎放送局記者 牧野慎太朗・ネットワーク報道部記者 後藤岳彦・おはよう日本ディレクター 北條泰成) ことし2月、福岡県民に衝撃が走りました。あの、日本最大規模のバス会社が大規模な減便を発表したのです。 その会社とは「西鉄」の愛称で福岡県民に親しまれている「西日本鉄道」。何に衝撃を受けたかというと、その対象路線でした。これまでバス路線の見直しと言えば地方の赤字路線が「定番」でしたが今回の対象は福岡市中心部。それも、屋台が立ち並ぶ「中洲」を中心に「天神」や「博多駅」などを結ぶ、1日平均8000人が利用する黒字路線でした。
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