出典:『漂流する日本企業』 さらに伊丹氏は最新の22年度の数字を用いて試算したところ、新たな実態が浮かび上がったと明らかにする。 「2022年までの10年間に日本の大企業の配当は14.1兆円増えた。増分を設備投資、人件費、配当にそれぞれ3分の1ずつ回すとして試算してみた。直近の設備投資に上乗せすると、バブル崩壊直後の規模に近くなる。また人件費の増加を加味すると、労働分配率(付加価値から人件費に分配される比率)は80年代前半の安定成長期に近くなる。日本経済がうまく回っていた時代の姿になるわけだ」 今年の春闘は大企業の満額回答が続出。連合の第1次集計の賃上げ率は5.28%に達したものの、伊丹氏は「やっと過去にけちった分をお返ししたなと思う」と述べ、賃上げの継続性を確保するには「放っておいたら駄目。株主優先という構造を変えることが必要だ」と強調する。中小企業の賃上げについては、「大企業に納入して