人類と猫の共生の歴史は1万年を超え、今や世界的な猫ブームだ。本書は「人間がいかに生きるかについて、猫から学ぶことは大いにある」という独創的なテーマを扱う。良き人生のために著者が指南する「猫がくれる十のヒント」は心に響く。 猫が人間に「愛すること」を教えた 「猫が人間に手なずけられたことはかつて一度もない」。著者、ジョン・グレイ氏はこう前置きして、家畜化の歴史をたどる。 フェリス・シルヴェストリス(ヨーロッパ山猫)という、たった一種類の猫が人間と共生する術を身につけ、世界中に広まった。今日の家猫は、フェリス・シルヴェストリスのなかの一種、フェリス・シルヴェストリス・リビカ(リビア山猫)の子孫である。 リビア山猫が家畜化した起源をめぐっては諸説ある。最近の遺伝子解析などから、ナイル川河口、地中海の東沿岸部からペルシャ湾に及ぶ「肥沃な三日月地帯」が有力視されている。古代オリエント文明の発祥の地だ