白い八旗兵――八旗俄羅斯佐領―― 八旗は清朝の発展に伴い、元来その主体であった満洲、モンゴル、漢三民族以外にもさまざまな民族を取り込んでいった。 比較的満洲族に近い東北アジアの諸民族、いわゆる「新満洲」(オロチョン・ダフール・シベ族など)はよく知られたところであるが、そのほかにもヌルハチ・ホンタイジ時代の朝鮮人捕虜からなる部隊「高麗佐領」や、乾隆年間のジューンガル部征服による「回子佐領(ほぼ現在のウイグル族にあたる)」、さらに大、小金川(四川省西部)のチベット人捕虜を編成した「番子佐領」すら存在した。 今回取り上げるのは、その中でも非常に珍しい部類に入るであろう「俄羅斯(オロス)佐領」、満洲語でオロス=ニル oros niruである。俄羅斯(オロス)とは「ロシア」を意味し、佐領(満洲語でniru)は、八旗の編制上の基本単位で、現代軍制の中隊にあたる。 すなわち「ロシア人中隊」である。