総務省は高齢者や障害者が情報通信技術(ICT)を使って効率的に仕事や生活ができるよう包括的に支援する政策パッケージを2019年度に打ち出す。障害者の個性に応じて仕事を割り振る人工知能(AI)や、職場や街中のバリアフリー情報の公開などを想定。野田聖子総務相が近く立ち上げる有識者懇談会で具体策を詰める。個別の施策の費用は19年度予算の概算要求に盛り込む。例えばAIで工場の複雑な生産工程を細分化し、
誰もが利用する大浴場の洗い場に、車椅子ごと入ってくる人を見かけたら、あなたはどう思うだろうか--。県西部の入浴施設で今年、「車椅子ごと大浴場に入りたい」と訴えた障害者の男性に、施設側は「車椅子は脱衣所まで」との見解を示した。障害者差別解消法(2016年施行)は民間事業者に対し、障害者からの要望には過重な負担にならない範囲で「合理的配慮」を提供することを努力義務とする。ただしどこまでの「配慮」が妥当なのか、線引きが難しいケースもある。入浴施設を例に考えた。【加藤沙波】 「ちょっと待って、車椅子ではダメだよ」。3月、大浴場に入ろうとした名古屋市の会社員男性が、従業員に呼び止められた。男性は事故で両足を切断し、車椅子を利用する。一緒に来た長女(4)とともに裸のまま、従業員から「車椅子は脱衣所までと決まっている」と注意を受けると、男性は車椅子から降り、腕の力で体を支え浴場に向かった。
鹿児島市の住宅地で2018年5月、新しいスタイルの賃貸マンションが誕生した。その名は「ツクルUD」。入居者が壁紙を張り替えたり、棚をつけたり、自分の好きなようにカスタマイズして世界にひとつだけの部屋を「ツクル」ことができて、原状回復は原則不要。さらに、車いす利用者など障がいのある人でも使いやすい「UD」(ユニバーサルデザイン)になっていることが特徴だ。 このマンションを手がけたのは、鹿児島市で不動産業を営む有限会社窪商事。同社代表の窪勇祐さんが車いすの男性と出会ったことから、「ツクルUD」プロジェクトが始動した。 3年ほど前のこと。「僕らが住める部屋ってないんでしょうか?」。車いすで生活する矢野剛教さんのこの問いかけに、16年にわたり不動産に携わってきた窪さんは「返す言葉が見つからず、自分の無力さを感じ、すごく悔しかった」と振り返る。車いすを利用している人は、家族と暮らしたり、古い住宅を購
国立大学は全盲や車いすの障害者に危険な場所が少なくない――。総務省近畿管区行政評価局が、障害者と一緒に近畿周辺の国立大7校を訪ねて調べたところ、そんな現状がわかり、同局は各校に改善を求めた。 日本学生支援機構の実態調査によると、障害のある学生が在籍する大学は2016年度、全体の86%に当たる667校。学生数は約2万5千人で、12年度より約1万4千人増えた。近畿行政評価局は障害者差別解消法の全面施行から1年がたった17年5~11月、全盲や車いす利用の障害者と福井、滋賀、京都、大阪、神戸、奈良女子、和歌山の7大学を訪ねた。 その結果、全盲の人は①多目的トイレの「便器洗浄」と「呼び出し」ボタンが区別できない②壁に設置されたモニターの角に頭をぶつける危険がある③階段の上に点字ブロックがなく転落の危険がある、といった点を指摘。さらに多目的トイレは広くて設備の位置を把握するのが難しく使いにくいが、点字
民族差別などを助長するヘイトスピーチ(憎悪表現)に対応する相談窓口を府が設置して1年。全国初の取り組みとして注目されたが、インターネット上や街宣活動による被害が続くにもかかわらず、相談はまだ1件もない。(山本美菜子) 「全く電話がないとは、想定外だった」 京都弁護士会の浅井亮副会長は読売新聞の取材にそう話した。 府は2017年7月、相談窓口を設置した。月2回の電話相談のほか、対面でも相談でき、人権問題に詳しい弁護士から助言を受けられる。 ただ、16年6月に施行されたヘイトスピーチ対策法では、相談者から要請があっても府が路上での街宣行為を中止することや、罰則を与えることはできない。「結局、自分で訴訟を起こすしかない」(弁護士)ため、相談してこないとみられる。 府は、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」による京都朝鮮第一初級学校前での街宣活動(09年、10年)をきっかけに対策に本腰を入れ始
名古屋城木造新天守にエレベーターを設置しないことを決めた名古屋市が24日、代替案とされる新技術を障害者団体に説明した。4企業が実績や構想を披露したが、障害者側は「求めているのは技術の発展ではなく、誰もが上れる権利だ」と納得しなかった。 今回紹介したのは、二足歩行ロボット、障害者も乗れる「かご」、介助者支援のパワードスーツ、階段昇降機の4技術。かごは市が当初示した11案になかった案で、自動車部品製造で培った技術で軽量化するなどして「段差を容易に超えられる」という。 これに対して、障害者からは「車いすの人が違う物に乗るのは皆さんが思う以上に負担だ」「(新天守完成までの)4年間で開発が進むのか」といった疑問が相次いだ。出席者の一人は終了後、「エレベーターも新技術の選択肢に入れてほしい」と話した。 障害者からは、69歳の河村たかし市長自身が「急な階段を最後まで上りきれるのか」との質問も出た。河村市
外国人にもわかりやすい「やさしい日本語」で、避難所での生活情報を伝えられるポスターがインターネットで公開されている。作成した弘前大学の佐藤和之教授(社会言語学)は「外国人だけでなく高齢者や子どもにも分かりやすい表現」と活用を呼びかけている。 「やさしい日本語」は阪神大震災をきっかけに、命を守るための言葉として佐藤教授らが作った。当時、災害情報から取り残された外国人が多く、死傷率が日本人より高かったという。 今回の豪雨災害で、インターネットサイトへのアクセス数は通常の2~3倍に。西日本からが目立っており、外国人向けの支援情報が求められているようだとしている。 ポスターは、避難場所や病院で使える「ライフライン」、「飲食物・日用品」、「病院・健康」、「衛生・避難所生活」について、豊富に言葉をそろえている。 「水(みず)を 無料(むりょう)で もらうことが できます お金(かね)は いりません」、
車いす対応の客室設置促進=「総数の1%以上」に基準改正-国交省 2018年07月16日00時13分 国土交通省は、車いす使用者に対応したホテルや旅館の客室数を増やすため、バリアフリー客室の設置基準を改正する方針を決めた。延べ床面積2000平方メートル以上で客室数が50室以上の場合、現行は車いす対応の客室を「1室以上」設置することが建築主に義務付けられているが、この基準を「客室総数の1%以上」に見直す。今後、バリアフリー法施行令を改正する。 車いす使用者向けの客室は、浴室の出入り口が幅80センチメートル以上あることや、扉の前後に段差がないことなどが定められている。ただ、2020年東京五輪・パラリンピックを控え、国際パラリンピック委員会(IPC)や障害者団体などから、客室数について改善を求める声が出ていた。 今回の見直しでは、例えば201~300室のホテルや旅館では、車いす使用者に対応した客室
宮城県内のタクシー乗務員が障害者を乗せる際に、障害者手帳などに記載された個人番号などを記録するケースがあることが分かった。県タクシー協会(仙台市若林区)は、個人情報の不適切な収集に当たる恐れがあるとして、記録をやめるよう加盟全183事業者に周知する方針を決めた。 障害者は身体障害者手帳や療育手帳を提示すれば、タクシーの乗車料金が1割引きされる。協会によると、事業者の一部は「本人確認のため」などとして乗務員に手帳内容を記録させていたという。 手帳には心身の状態など高度な個人情報が書かれている。今月、仙台市内の障害者から「不要な個人情報が収集され、流出が心配」などとする訴えが、協会や東北運輸局に寄せられた。 運輸局によると2008年、全国で個人情報の取り扱いに関する同様の苦情があったとして、手帳の顔写真の確認にとどめるように求める通知を協会や事業者に出した。 だが、協会によると通知を守らずに記
日本テレソフト(東京都千代田区)は、点字と墨字を同時に印刷できるプリンターで北米市場に進出する。墨字は点字に対し、普通に書かれた文字や印刷された文字。先進国ではバリアフリーな環境を整えるために、申込書や申請書、請求書など各種書類の点字表示を義務付けるなど用途が多様化してきた。こうした書類や資料は、視覚障がい者と健常者の両者が利用することが多いため、同プリンターの北米市場への投入を決めた。 福祉機器販売を展開するカナダのヒューマンウエアと北米での販売代理店契約を結んだ。販売目標は初年度で50台。北米に販路を獲得することで、海外展開に弾みをつける。同社のプリンターは、点字と墨字とも約100カ国の言語に対応している。北米の金融機関や医療機関、通信キャリアなど幅広い業界に向けて、拡販する。 世界の点字プリンター市場規模は約4000台。金子社長は「現在(当社のシェアは)数%で、5年後には3割に引き上
世界で唯一、女性による自動車の運転が禁じられていたサウジアラビアで24日、運転を認める法律が施行された。地元メディアによると、日付が変わると、さっそく首都リヤドなどで女性の運転する車が走り、「歴史的な日だ」「運転できることを誇りに思う」などと喜びの声があがった。 サウジでは1990年に内務省が女性の運転を認めないとする声明を出し、これが事実上の法律となった。これまで女性は通勤や買い物、子どもの送り迎えをする際にタクシーを使ったり、運転手を雇ったりしなければならなかった。 西部ジッダに住むハーラ・アリリダさん(54)はこの日、午前7時半ごろにハンドルを握った。これまでは運転手を雇っていたが、昨年9月に解禁が発表された後、日本メーカーの紺色のSUV(スポーツ用多目的車)を購入。朝日新聞の電話取材に、「運転は快適だった。すごく満足している」と、興奮した様子で話した。 サウジでは今月4日から運転免
「レゴランド・ディスカバリー・センター東京」(東京都港区)を訪れた聴覚障害の4人が、聞こえないことを理由に入館を断られていたことがわかった。国は「障害者差別解消法の禁止事項に当たる」とし、施設側に改善を求めた。運営会社は「大きな過ちを犯した。深くおわびする」としている。 入館を断られたのは、新潟県に住むろう学校教員でろう児支援団体代表の阿部光佑さん(31)。4月21日の土曜日、家族などで楽しもうと、息子(3)と娘(6)と友人の計4人でレゴランドを訪れた。入り口でスタッフに呼び止められ、「聞こえる方はいらっしゃいますか? 聞こえる人が付き添わないと入館はできません」と筆談で伝えられた。4人とも聴覚障害があるため、理由を聞くと「災害時に避難の呼びかけに応じることができないため」と説明された。子どもたちは「ほかの子は遊べるのに、なんで自分は入れないの?」とショックを受けた様子だったという。 施設
DVやストーカー、児童虐待の被害者らを保護するため住民票の交付を制限する「住民基本台帳制度に基づく支援措置」の運用が自治体で異なるとして、DV問題に取り組む一般社団法人「エープラス」(東京都)が13日、統一の手順を定めるよう総務省と内閣府に要望した。被害者の住所が加害者に漏れると殺人などの事件に発展する恐れがあり、専門家は「国は手順を詳細に示すべきだ」と指摘している。 支援措置は、自治体が被害者からの申請を受け、加害者本人や加害者から依頼を受けた弁護士らに対して住民票の交付などを制限する制度。総務省によると、対象者は昨年12月現在で11万7971人に上る。制度開始から14年たったが、住民票の交付を請求する弁護士らが加害者と関係ないことを確認する手順などはいまだに統一されていない。
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