今年の群像新人文学賞受賞作品。現在発売中の『群像』6月号に掲載されている。 私が断言してもどうしようもないが、次の芥川賞を獲ると思う。圧倒的だった。 「芥川賞を獲る」が最大級の賛辞としてぺろりと出てきてしまう自分の単純さがときどき厭になる。受賞したらどうだと鼻高々になって、受賞を逃したら嗚呼やはり文壇はダメだと酒の肴にするだろうと想像がついてますます厭になる。 まあ、とにかく面白かった。1ページ目の下段に差し掛かったあたりから、終始飲まれっぱなしになった。見事だ。 鬼気迫る圧倒的な筆致はもちろん魅力的ではあるのだが、なんといってもこの作品は新人でなければ書けなかった。 そうとも。まともな観察眼と良識を持った小説家なら、東日本大震災があったあの日、まさに津波に飲まれた被災者をテーマにして完全なフィクションを書けはしない。東日本大震災というあまりに巨大で暴力的な題材に、ここまで真正面からぶち当