5月5日に行われたロンドン市長選で、労働党のサディク・カーン下院議員が当選し、8年ぶりに保守党から市長の座を奪還した。EU圏で初のイスラム教徒の市長として注目を浴びているが、肝心なことがあまり報道されていないように思うので、少し書いてみたい。 昨年9月以来の英国国政の状況 選挙前に至る状況を少し説明したい。最近の英国労働党は、主張が保守党と似たり寄ったりになってきて多くの人々を失望させていた。ところが昨年9月にジェルミー・コービンが労働党首として選出されてから少し事情が変わっている。 コービンは自他共に認める左派、民主社会主義者で、彼の長い政治キャリアの中で一貫して非主流派の労働党議員だった。そのコービンが昨年9月に突如として党首になったのである。支持者は「コービン革命」を期待する一方で、一部左派系の新聞を除くほとんどのメディアと労働党内の一部議員がこぞってコービンを叩きまくるという状況が