分類学と聞くと、ちょっと地味な学問というイメージを持っている人も多いかもしれない。だが、じつは分類学は「すべての生物学の土台となる学問」であり、分類学を知ると「この世界の見え方まで変わる」のだという。 分類学の魅力が語りつくされた岡西政典氏の『生物を分けると世界が分かる』(講談社ブルーバックス)から、その一部をお届けする。 クモヒトデという奇妙な生物に惹かれ、これまで20種以上の新種を報告してきた岡西氏だが、いったい新種とはどのように発見されるのだろうか。分類学者の日常を覗いてみよう。 釧路から、いざ出航 「船に乗る」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、旅客船や、もしくは漁船かもしれない。どちらも私たちの日常生活に馴染みのある船だ。旅客船で旅をしたことのある人もいるだろうし、いつも私たちの食卓に並ぶ魚は、漁船に乗った漁師が獲ってきたものだ。 2020年8月に私が乗った船は、このいずれとも異