谷崎潤一郎の『細雪』は、4人姉妹のうち次女の幸子、三女の雪子、四女の妙子が出かける場面で始まる。3人は「阪急御影の桑山邸にレオ・シロタ氏を聴く小さな集り」に招待されていた。 ▼名ピアニストのシロタ氏の娘として、当時東京で暮らしていたのが、後のベアテ・シロタ・ゴードンさんだ。年末にニューヨークの自宅で89歳の生涯を終えたことを、きのう知った。 ▼ロシア系ユダヤ人のゴードンさんは、5歳のとき東京音楽学校に招かれた父とともに来日した。約10年間を過ごした後、米国の大学に進む。戦争が終わってすぐGHQの民間要員となったのは、日本で消息不明となっている両親に会うためだった。22歳のゴードンさんは昭和20年12月24日、5年ぶりに日本の土を踏み、再会を果たす。 ▼翌年2月に日本国憲法の草案づくりのメンバーとなってからは、多忙をきわめた。なにしろ作業期間はたったの9日間である。日本語を含めて6カ国語に堪
男社会で出世する女性に対する逆風が、どれほど強いものか。読売新聞に連載中の「時代の証言者」のなかで、高島屋元常務の石原一子(いちこ)さんが、赤裸々に語っている。 ▼「異例の昇進」を果たした当時は、「社長の虎の威を借る狐」などと揶揄(やゆ)された。それから数年後、なぜか今度は社長からにらまれる。十数年たって、ある人から理由を聞かされた。社長のいすを狙っている、と告げ口をされたのだという。 ▼今回の衆院選での女性当選者は、前回より16人減って38人にとどまり、女性議員の占める割合が7・9%となった。主にマスコットとしての役割を期待された、民主党議員の落選が目立ったからだ。衆院の男社会の色合いがますます強まった。 ▼そんななか、きのう発足した第2次安倍内閣では、女性の登用が目立つ。稲田朋美氏が行革相、参院議員の森雅子氏が少子化担当相として入閣するほか、自民党四役のうち、野田聖子氏が総務会長、高市
エリザベス1世(1533~1603)といえば、英国の歴史のなかで、ビクトリア女王とともに名君の誉れが高い。巧みな外交政策で、英国艦隊によるスペインの無敵艦隊撃滅を導き、大英帝国の繁栄の基礎を築いた。 ▼彼女は「私はイングランド(英国)と結婚している」と各国君主の求婚を退けたことでも知られる。韓国初の女性大統領となる朴槿恵(パク・クネ)氏(60)が、もっとも尊敬する人物だ。「国民だけが私の家族」と、やはり独身の朴氏は遊説で語っていた。 ▼苛烈な青春を送った点でも2人は似ている。エリザベス1世は、2歳で母が処刑され、その後も長くロンドン塔に幽閉された。朴氏は父の朴正煕(チョンヒ)元大統領と母をともに凶弾で失っている。 ▼朴氏自身、顔を刃物で切られるテロにも遭った。それでもひるまない姿から「韓国のジャンヌダルク」とも呼ばれる。イメージがバタくさいのは、英語、フランス語、スペイン語に堪能だからか。
韓国に新しい大統領が誕生した。しかも初の女性大統領だ。女性の最高指導者は日本はもちろん米国にもまだ登場していない。北朝鮮の脅威の下でも「女性がやれる」という選択は韓国政治の新たな進展である。祝賀と敬意を表したい。 朴槿恵新大統領は1960~70年代の18年間、大統領など指導者を務めた軍人出身の朴正煕氏の長女である。まだ20代だったころ、母の陸英修女史は74年、北朝鮮がらみの狙撃事件(文世光事件)で死亡し、父も79年、側近に暗殺されるという政治的悲劇を2度も経験している。 政治に身を投じた後、よく「親の七光」がいわれたが、国会議員として野党時代を含めすでに15年の経歴を持つ。韓国の政治家の中では最も経験豊かな保守本流の安定感ある政治家だ。 新大統領の課題は、まず国内的には国民の生活格差解消など最大の公約である経済民主化のほか、敗れた文在寅候補支持の革新系など社会的不満勢力をいかになだめるかで
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