北朝鮮による拉致問題が、安倍晋三首相の「現政権で解決する」という強い決意を受け、日朝政府レベルでジワリと動き出した。朝鮮半島に近く海岸線が複雑な九州・山口地方は拉致事件の主要な舞台。政府が認定した拉致被害者が3人、拉致の疑いがある特定失踪者が42人いるほか、住民の行方不明が相次ぎ「神隠し」と恐れられた海岸も数多く存在するだけに、全面解決への期待は大きい。(田中一世) 「浜辺の松林に近づくな。神隠しにあうぞ…」 福岡市中央区福浜から早良区百道浜にかけては、今でこそ埋め立てにより近代的なビルが林立する福岡市の副都心だが、昭和60年ごろまでは民家はまばらで松林と砂浜が続いていた。この海辺で40年~50年代に、漁師らが突然姿を消す事案が相次ぎ、付近の住民は子供にこう言い聞かせていたという。 これは北朝鮮が盛んに拉致事件を敢行した時期とピタリと重なる。当時、北朝鮮による犯行とはほとんど認知されておら