司馬遼太郎氏の作品「坂の上の雲」の中で、明治天皇からなぜ地味な存在だった東郷平八郎を連合艦隊司令長官に抜擢(ばってき)したのかと尋ねられた海軍大臣、山本権兵衛が、こう答えるシーンがある。 「東郷は運のいい男ですから」 リーダーの持つ「運」が、時に国の浮沈を左右するというエピソードだが、2020年夏季五輪を東京へと招き寄せた安倍晋三首相もまた、強運の持ち主のようだ。 「良かった。これで招致失敗だったら、めちゃくちゃに批判されていた。日本にとっても安倍政権にとっても非常に大きい。失敗していた場合に比べ何倍も違う」 安倍首相は開催地を決める国際オリンピック委員会(IOC)総会が開かれたアルゼンチンから帰国後、周囲にこう喜びを語った。ライバルであるスペインの財政難やトルコの政情不安もあり、事前の票読みで東京優位は伝えられていたものの、選挙はふたを開けてみるまで分からないからだ。 ただ、もちろん招致