このように外交において秘密が必要な理由は何だろうか。何よりも、今交わす会話が公開されないという信頼があってこそ交渉当事者は正直になれる。外交交渉をしてみると、自国の難しい状況を率直に吐露して譲歩を求めなければならない時がある。時には国益のために嘘も言わなければならない。よっぽどでなければ「大使とは、祖国のために嘘をつくため外国に派遣された誠実な人」という英国政治家ヘンリー・ウォートンの定義が通用するだろうか。 また、すべての妥協がそうであるように、外交の基本はやりとりすることだ。一定部分は譲歩してこそ取りまとめることができる。ある場合には手形を切るようにその場ではなくても後で便宜を図ると約束しなければならない時もあるだろう。しかし世の中があまりにも複雑になって利害関係が鋭くなったために、どんな外交政策でも利益を受ける人がいれば損をする人もいるはずだ。だから交渉内容とその過程が1つ1つあらわ