親から虐待を受けて病院の児童精神科に入院した3人の小学生が主人公だ。退院して17年後、再会した3人の周辺で次々に殺人事件が起こる。平成11年に刊行された長編小説『永遠の仔』は、200万部を超えるベストセラーとなった。 ▼タイトルの「仔」という字は、仔猫や仔羊のように、動物に使われる場合が多い。動物の赤ちゃんが母親のお乳を吸おうとすがりつくように、人間も親の絶対的な愛情を求めずにはいられない。著者の天童荒太さんは、そんな意味を込めて選んだという。 ▼神奈川県厚木市のアパートの一室で、5歳の男児、斎藤理玖(りく)ちゃんも母親の愛情を必死に求めていたはずだ。どんな事情があったのか不明だが、母親は出ていった。父親は、母親の代わりに愛情を注ぐどころか、食事や水を与える回数を減らしていった。やがて、週に1、2日程度にしか帰らなくなる。 ▼理玖ちゃんは、ひとりぼっちで餓死した可能性が強い。「仔」という字