「乙女の密告」で芥川賞を受賞し、2017年に42歳で亡くなった作家、赤染晶子(あかぞめあきこ)さんの初めてのエッセー集が出た。新聞や雑誌に掲載された55編を集めた『じゃむパンの日』(palmbooks)。生まれ育った京都の街の息づかいの中、おかしみをたたえた感性にノックアウトされる読者が続々。じゃむパンファン急増の冬となった。 表題作の「じゃむパンの日」では、テナントビルで働くわたしが、資格教室のスタッフや看護師、インド人と様々に間違われる。困惑したわたしは、心の中で反撃する。「わたしは新妻です!」。え? その後の妄想の顛末(てんまつ)は……。 1編1編がおかしく、いとおしい。登場人物はわたしや母親や祖父母、まわりのおばちゃん、おっちゃんたち。独り言のような短文でたたみかけ、絶妙な間合いがある。あれよあれよという間に京の路地裏のような赤染ワールドに引き込まれ、気づくとクスッ。肩の力が抜けて