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ブックマーク / book.asahi.com (45)

  • 「民主主義を装う権威主義」書評 露骨な不正を避け公平性を演出|好書好日

    民主主義を装う権威主義 世界化する選挙独裁とその論理 (叢書21世紀の国際環境と日) 著者:東島 雅昌 出版社:千倉書房 ジャンル:政治・行政 「民主主義を装う権威主義」 [著]東島雅昌 民主主義とは競争的な選挙を行う政治体制を指す。この定義が政治学の世界で定着したのは、米ソ冷戦の時代だった。野党の参入の有無という基準には、ソ連を明確に独裁体制として分類できる利点があった。 だが、書によれば、この定義で民主主義と独裁体制を区別できた時代は過去のものだ。米ソ冷戦が終結して30年、今日では独裁体制の8割が選挙を実施し、野党の参加を認めている。 こうした独裁体制は、暴力的な威嚇や選挙制度の操作によって、最初から与党が選挙で圧勝するように仕組む場合も多い。しかし、一部の独裁体制は、あからさまな選挙不正からは距離を取り、大衆的な支持基盤を固めることを重視する。 では、なぜ独裁者が選挙を操作しない

    「民主主義を装う権威主義」書評 露骨な不正を避け公平性を演出|好書好日
    nagaichi
    nagaichi 2023/05/08
    一権集中一党優位な体制が形式的な代議制民主主義を採用し、統治の正統性を担保する目的で選挙を行うことがありうるという指摘か。チンギス・カンがクリルタイを開いていたから、モンゴル帝国は民主的とはいわない。
  • 「神憑り軍人」たちは何を信じたか 藤巻一保さん「戦争とオカルティズム」インタビュー|好書好日

    藤巻一保さん=撮影・北原千恵美 藤巻一保(ふじまき・かずほ)作家・宗教研究家 1952年、北海道生まれ。中央大学文学部卒。編集者を経て著述活動に入る。東洋の神秘思想、近代新宗教に関する著作を数多く手がけている。主な著書に『密教仏神印明・象徴大全』『役小角読』『秘説 陰陽道』『愛と呪法の博物誌』『偽史の帝国 “天皇の日”はいかにして創られたか』など。 異常な時代の正体を明らかにしたかった ――藤巻さんの『戦争とオカルティズム 現人神天皇と神憑り軍人』は、陰謀論や超古代史などのオカルトに魅了された旧日軍の軍人たちを通して、日を〈聖戦〉へと導いたイデオロギーに迫った異色の戦争裏面史です。執筆のきっかけを教えてください。 若い頃から秘教的な世界に興味があって、長年その分野のを書いたり編集したりしてきましたが、一方で日は神の国であるという信仰に支えられた明治から昭和までの日についてもず

    「神憑り軍人」たちは何を信じたか 藤巻一保さん「戦争とオカルティズム」インタビュー|好書好日
  • 「犠牲者意識ナショナリズム」 各国の歪んだ自意識と向き合う 朝日新聞書評から|好書好日

    犠牲者意識ナショナリズム 国境を超える「記憶」の戦争 著者:イム・ジヒョン 出版社:東洋経済新報社 ジャンル:社会思想・政治思想 「犠牲者意識ナショナリズム」 [著]林志弦 「犠牲者意識ナショナリズム」とは著者の造語で、自分の国の一体性や正当性を主張するために、自分たちの英雄的な行動ではなく、他国から受けた被害を過剰に強調し、自分たちの加害を過剰に小さく見せようとする態度のことをいう。 慰安婦問題が欧州の女性に対する犯罪の記憶を呼び起こしたり、ホロコーストの記憶とイスラエルによるパレスチナでの暴力の記憶が重ねられたりする記憶のグローバル化を背景に、ポーランド、ドイツ、イスラエル、日韓国、旧ユーゴなどの犠牲者意識ナショナリズムを縦横無尽に論じる快著の翻訳を寿(ことほ)ぎたい。 私が初めて著者の報告で犠牲者意識ナショナリズムという言葉を聞いたとき、なんて恐ろしい概念だと驚愕(きょうがく)し

    「犠牲者意識ナショナリズム」 各国の歪んだ自意識と向き合う 朝日新聞書評から|好書好日
  • 「神になった武士」書評 2千人超が祀られるのはなぜか|好書好日

    「神になった武士」 [著]高野信治 副題にすっかり騙(だま)された。「平将門から西郷隆盛まで」――ふむふむ、その他の神になった武士といえば徳川家康に豊臣秀吉、源為朝もいたっけと考えながら読み始め、己の浅学に打ちのめされた。なにせ書によれば、古代から現在までに神格化された武士の総人数は二四三一人、うち一カ所のみで祀(まつ)られている者は二一一二人と、私の予想をはるかに超える武士祭神が紹介されていたからだ。 書は全国に存在する武士祭神を統計化し、そのデータを元に神格化の歴史を読み解いた書籍。作中にも言及がある通り、そもそも武士祭神は地域色が強い存在である。それを悉(ことごと)く調査した筆者の意欲には、つくづく感服させられた。 武士はなぜ神とされるのか。平将門、徳川家康といった著名な者ばかりではなく、実に二千人を超える武士が全国各地で祀られる理由は何か。筆者はその背景を分析するとともに、彼ら

    「神になった武士」書評 2千人超が祀られるのはなぜか|好書好日
  • 「旧植民地を記憶する」 侵略を公的に認めることの意味 朝日新聞書評から|好書好日

    旧植民地を記憶する フランス政府による〈アルジェリアの記憶〉の承認をめぐる政治 著者:大嶋 えり子 出版社:吉田書店 ジャンル:政治・行政 「旧植民地を記憶する」[著]大嶋えり子 他国への侵略行為が目の前で起きた時、それを批判する足場の一つは、過去の侵略がもたらした被害の記憶である。だからこそ、旧宗主国の政府が植民地の記憶を公的に認めるか否かは、喫緊の課題なのだ。フランスの加害の記憶を扱った書は、このことを痛感させる。 フランスは、19世紀からアルジェリアを支配し、1962年の独立まで収奪や搾取を続けた。独立戦争時には多くのアルジェリア人を殺害した。フランス軍に参加したアルジェリア人戦闘員を保護することもしなかった。 著者が試みたのは、こうした事実の解明ではない。フランス政府が旧植民地の記憶をどのように承認してきたかをつぶさに追うことだ。 政府は加害の記憶を公的に認めてこなかった。補償や

    「旧植民地を記憶する」 侵略を公的に認めることの意味 朝日新聞書評から|好書好日
  • 『張赫宙日本語文学選集』――魯迅と並んだ〈世界的〉作家はいかに忘却され隠蔽されたのか?(南富鎭)|じんぶん堂

    記事:作品社 『張赫宙日語文学選集 仁王洞時代』(作品社) 書籍情報はこちら 魯迅に相並んだ「世界的」作家 今はほとんど忘れられているが、張赫宙(ちょう・かくちゅう 1905-1997)は、かつては魯迅と相並ぶアジアを代表する作家と称された。朝鮮人として初めて日文壇にデビューし、宗主国の言語であった日語で植民地期朝鮮の悲惨な現実と多様な人間群像を、自然主義リアリズムで巧みに描き出した。 張赫宙のいくつかの作品は、当時としては珍しく、世界的な広がりを見せていたエスペラント語をはじめ、中国語やポーランド語やチェコ語などにも翻訳紹介された。そうした張の活躍は、第二次世界大戦前のグローバルな連帯の中にいた「弱小民族文学」の朝鮮代表として評価され、「世界文学」の代表格という名声と勢いさえあった。 非難と排除と隠蔽と忘却の朝鮮人作家 第二次世界大戦の終結後、旧弱小民族はそれぞれ自前の近代国民国家

    『張赫宙日本語文学選集』――魯迅と並んだ〈世界的〉作家はいかに忘却され隠蔽されたのか?(南富鎭)|じんぶん堂
  • 福井県立図書館「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」インタビュー レファレンスサービスは、なんでも聞いていいんです!|好書好日

    宮川陽子さん福井県立図書館 司書 1998年から福井県立図書館で司書として勤務。現在の担当分類は、建築や機械工学、家政学などを扱う「5類 技術」(日十進分類法)。読書バリアフリーサービスや寄贈図書の管理なども行なっている。同館の「覚え違いタイトル集」の発案者でもある。 福井県立図書館「覚え違いタイトル集」 レファレンスサービスの認知向上のために ――「覚え違いタイトル集」は、どういった経緯で生まれたのですか。 そもそもの始まりは大学時代の後輩が久世番子さんの漫画『暴れん坊屋さん』を勧めてくれたのがきっかけかもしれません。久世さんが書店でバイトをしていたときのことを描いた漫画で、お客さんが覚え違えているタイトルから「これですね」と正しいタイトルのを渡すシーンがあったんですよね。それを見て図書館のカウンターでも似たようなことがあるという話から、エクセル表で覚え違いの事例を集めていくことに

    福井県立図書館「100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集」インタビュー レファレンスサービスは、なんでも聞いていいんです!|好書好日
    nagaichi
    nagaichi 2022/02/08
    人間はミスをする生き物だし、間違わない人はいないとはつくづく。
  • 「裏世界ピクニック」宮澤伊織さんインタビュー 虚と実、ホラーとSFのはざまで展開する冒険|好書好日

    宮澤伊織(みやざわ・いおり)作家 秋田県生まれ。2011年『僕の魔剣が、うるさい件について』でデビュー。15年には「神々の歩法」で第6回創元SF短編賞を受賞。著書に『不意ながらも魔法使い』『そいねドリーマー』など。「魚蹴」名義でテーブルトークロールプレイングゲームTRPG)のリプレイや世界設定も手がける。 SF・ホラー・冒険の三柱 ――〈百合SF〉のヒット作として知られる『裏世界ピクニック』は、ホラーファンにも見逃せない作品です。実話怪談(=体験談をもとにした怪談)ネタを盛り込んだこのシリーズは、どのように誕生したのでしょうか。 もともとはストルガツキー兄弟の『ストーカー』のような冒険SFをやりたい、というのが出発点だったんです。たとえば町中の廃墟のドアをくぐると不思議な世界が広がっていて、そこを冒険して帰ってくるというような話ですね。その設定を詰めているうちに、徐々に実話怪談の要素

    「裏世界ピクニック」宮澤伊織さんインタビュー 虚と実、ホラーとSFのはざまで展開する冒険|好書好日
  • ナチズム研究の世界的権威が「断末魔の10カ月間」に迫る イアン・カーショー『ナチ・ドイツの終焉 1944-45』|じんぶん堂

    記事:白水社 ナチズム研究の世界的権威が、第三帝国末期の「断末魔の10カ月間」に迫る! イアン・カーショー著『ナチ・ドイツの終焉 1944-45』(宮下嶺夫訳・小原淳解説、白水社刊)は、学術性と物語性が融合した傑作巨編。 【地図9点、カラー口絵16頁収録】 書籍情報はこちら 【著者インタビュー動画:DAS ENDE von Ian Kershaw】 初めに 1945年初頭、惨憺たる敗戦が迫りつつあったころ、ドイツではしばしば、「終焉なき恐怖よりは、恐怖ある終焉」の方がましだという言葉が聞かれた。結局彼らが経験したのは、「恐怖ある終焉」だった。それは、歴史上前例のない方法と規模とで彼らを襲い、巨大な破壊と膨大な人命の喪失をもたらした。この災厄のほとんどは、ドイツが連合国の要求する降伏条件に屈していたならば避け得たはずのものだった。それゆえ、1945年5月以前、ドイツが降伏を拒否し続けていたこ

    ナチズム研究の世界的権威が「断末魔の10カ月間」に迫る イアン・カーショー『ナチ・ドイツの終焉 1944-45』|じんぶん堂
  • 「哲学の女王たち」書評 なぜ白人男性ばかりだったのか|好書好日

    「哲学の女王たち」 [編]レベッカ・バクストン、リサ・ホワイティング エーディト・シュタインの章がとくに衝撃的だ。 ユダヤ人家庭に生まれたシュタインは、哲学者フッサールのもとで博士号を取る。彼の論文作成でも重要な役割を果たす。だが功績は認められず、フッサールは彼女の大学教員資格申請を却下。シュタインはそののち修道女となるが、アウシュビッツのガス室で人生を終えた。わたしたちは、シュタインの人生は変えられないが、いまも残る大学の閉鎖性は変えられよう。書はそう語りかける。 女性の哲学者を並べたこのは、白人男性ばかりが並ぶこれまでの哲学史への異議申し立てだ。教育から排除されてきたため数こそ少ないが、女性の哲学者は大昔からいる。だが正当に評価されてはこなかった。 登場するのは、古代のディオティマに始まる20人。アーレントの人種差別を指摘するように、女性哲学者の偶像化が目的ではない。 白人男性を白

    「哲学の女王たち」書評 なぜ白人男性ばかりだったのか|好書好日
    nagaichi
    nagaichi 2021/07/20
    未読だから知らんけど、班昭の三従四徳は現代的なジェンダー観からは叩かれる系だと思うけどな。
  • 田中克彦さん「ことばは国家を超える」インタビュー 日本語、ウラル・アルタイ語、ツラン主義……ちらばる仲間をつないで|好書好日

    読後、世界の見方が変わってしまうだ。フィンランド語、ハンガリー語、トルコ語、モンゴル語、朝鮮語、そして日語。ユーラシア大陸中心に四方に散らばるこれらの言語が、一つのグループに属するという考えがある。文の構造や表現方法に類似点が見いだせるという。書は、今では下火になったこのウラル・アルタイ語説の水脈をたどる。 「一番書きたかったテーマ」。東京外大でモンゴル語を専攻していた1950年代には、日語の起源をめぐって大いに検証された説だった。だがその後、音韻法則を重視する立場から否定され、言語学の世界でもあまり論じられなくなった。 その研究史は、中央アジアが持つヨーロッパの「影絵」としての哀愁がつきまとう。同じ祖先を持つ似通った言語が集まるヨーロッパで「浮いた」存在だったハンガリーとフィンランドの言語学者たちは、まだ見ぬ仲間を探しにウラル山脈を越えて東へ。ロシアのシベリア研究も、この地域の言

    田中克彦さん「ことばは国家を超える」インタビュー 日本語、ウラル・アルタイ語、ツラン主義……ちらばる仲間をつないで|好書好日
    nagaichi
    nagaichi 2021/06/21
    日本人のルーツもバイカル湖周辺説あるものな。匈奴・東胡の先民から分かれたのかもしれない。
  • 若者の2割がアンダークラス 非正規、低賃金、未婚でぎりぎりの生活 ――宮本みち子さんに聞く|じんぶん堂

    記事:じんぶん堂企画室 『アンダークラス化する若者たち』の編著者、宮みち子さん 書籍情報はこちら 非正規雇用、失業、無業 ――アンダークラスの若者たちとはどんな層で、どのくらいの規模で存在するのでしょうか。 アンダークラスには、非正規雇用者が大きな一群として存在しますが、さらにその周囲には、ある時は非正規で働き、ある時は無業でいたり、ある時は引きこもっていたり、その時々で労働市場に入ったり出たりしている若者と、労働市場にまったく入れない若者とが混在しています。このでは、非正規雇用よりさらに一層不安定な状態にいる人、無業者まで含めて、アンダークラスだと考えました。 『アンダークラス化する若者たち ――生活保障をどう立て直すか』(明石書店) おおよそ若者の2割に達していると考えられます。総務省の労働力調査(2020年平均)によると、15歳~34歳では非正規労働者が約512万人(この年代の人

    若者の2割がアンダークラス 非正規、低賃金、未婚でぎりぎりの生活 ――宮本みち子さんに聞く|じんぶん堂
  • 「ベネズエラ」書評 過度の権力集中が示す苦い教訓|好書好日

    ベネズエラ 溶解する民主主義、破綻する経済 (中公選書) 著者:坂口安紀 出版社:中央公論新社 ジャンル:新書・選書・ブックレット ベネズエラ 溶解する民主主義、破綻する経済 [著]坂口安紀 インフレ率は10万%を超し、糧難で国民の過半が平均11キロ痩せ、治安は世界最悪レベルのベネズエラ。かつて安定した民主体制をもち、いまも世界一の石油埋蔵量を誇るこの国は、なぜこれほど悲惨な状態に陥ってしまったのか。理由を一言でいうと、権力の過度な集中である。 経緯はこうだ。1992年、伝統的政治家への不信が強まるなか、将校チャベスは軍事クーデターを決行した。若いときから彼は体制変革を夢見ていた。クーデターは失敗するがチャベスは生き延び、98年の大統領選で当選を果たした。チャベス政治の特徴は、法の支配を尊重しないことだ。彼は超法規的な手段により新憲法を制定した。そして新憲法のもと、最高裁や国家選挙管理委

    「ベネズエラ」書評 過度の権力集中が示す苦い教訓|好書好日
  • 「リベラルとは何か」書評 「自由と再分配」の危機と可能性|好書好日

    リベラルとは何か 17世紀の自由主義から現代日まで (中公新書) 著者:田中拓道 出版社:中央公論新社 ジャンル:新書・選書・ブックレット リベラルとは何か [著]田中拓道 リベラルという言葉の使い方は実に難しい。もともと多義的なことに加え、現在ではしばしば(あるいはほとんどの場合)否定的な含意を込めて使われるからだ。日では1990年代半ばの政治改革期に、それまでの革新という言葉に代わり、突如として用いられ始めた。リベラルを掲げる政治勢力に属する政治家が、「ところでリベラルって何だ」と聞いたという笑えない逸話も残っている。 書の最大のメリットは、この言葉を明確に絞り込んで使っている点である。例えば欄でも取り上げられたヘレナ・ローゼンブラットの『リベラリズム 失われた歴史と現在』が、古代ローマ以来の射程でこの概念を捉えるのに対し、書の基軸となるのは20世紀に生まれた現代リベラルであ

    「リベラルとは何か」書評 「自由と再分配」の危機と可能性|好書好日
    nagaichi
    nagaichi 2021/02/17
    id: the_sun_also_rises 共産主義も様々な思潮の総体だが、人類の解放(Liberation)を標榜する以上は広義のリベラルの一派ではあるでしょ。国家の再分配とも相性は悪くないし、自由民主を僭称するリベラルを腐す人らよりは近い
  • 近藤ようこさん「高丘親王航海記」インタビュー 澁澤龍彦作品の“明るさ”に惹かれて|好書好日

    文:朝宮運河 写真:斉藤順子 近藤ようこ(こんどう・ようこ)マンガ家 1957年新潟県生まれ。國學院大學在学中の79年、雑誌「ガロ」に投稿した「ものろおぐ」でデビュー。『見晴らしガ丘にて』で第15回日漫画家協会賞・優秀賞、『五色の舟』(津原泰水原作)で第18回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門大賞を受賞した。主な作品に『悲しき街角』『遠くにありて』『ルームメイツ』など。『妖霊星』『宝の嫁』など中世日を舞台にした作品や、『戦争と一人の女』(坂口安吾原作)、『夢十夜』(夏目漱石原作)、『死者の書』(折口信夫原作)など、日文学のコミカライズでも高い評価を受けている。 これまで描いたことのない世界を描く ――澁澤龍彦の小説をコミカライズした『高丘親王航海記』の1・2巻が同時発売されました。9世紀に実在した高丘親王(平城天皇の皇子)の天竺への旅を描いた、奇想天外な冒険記です。幻想文学の傑作として

    近藤ようこさん「高丘親王航海記」インタビュー 澁澤龍彦作品の“明るさ”に惹かれて|好書好日
  • 「産業革命は黒人奴隷たちの血と汗の結晶である」 歴史学の常識を覆した研究者とは 川北稔さんが解説|じんぶん堂

    記事:筑摩書房 iStock.com/vivalapenler 書籍情報はこちら 「周辺」から世界の歴史を見る 植民地など、「周辺」とされる地域から世界の歴史をみようとする立場は、いわゆる世界システム論をはじめとして、いまではそれほど珍しくはない。そうした見方は、学問的にも市民権を得ているといえる。しかし、ほんの半世紀まえには、そうした立場は、まともな学問とはみられないものでもあった。先頭を切って、この困難な局面を切り開いたひとりが、書の著者エリック・ウィリアムズである。 トリニダード・トバゴの郵便局員の息子として生まれたウィリアムズは、秀才の誉れ高く、周りの期待を背負って、宗主国イギリスのオックスフォード大学に送りこまれた。古典学を専攻した彼は、抜群の成績で卒業したものの、当時のイギリスには─―というより、日をふくむ世界には─―、西洋文明の根源にかかわる古典学、つまりギリシア語やラテ

    「産業革命は黒人奴隷たちの血と汗の結晶である」 歴史学の常識を覆した研究者とは 川北稔さんが解説|じんぶん堂
  • GHQが「洗脳」?実態は 賀茂道子さん、保守論壇「自虐史観植え付けた」説を史料で探る|好書好日

    「ウォー・ギルト・(インフォメーション・)プログラム」という言葉が保守論壇で流行している。第2次世界大戦後の占領軍の計画で、日人は洗脳され、自虐史観に塗り替えられたというのだ。その全体像を膨大な史料から探った著作が公刊された。当に日人は洗脳されたのか。研究の結果から著者は「洗脳されたとは思えない」という。 「体系的な施策ではなかった」 著作は『ウォー・ギルト・プログラム――GHQ情報教育政策の実像』(法政大学出版局)。著者は賀茂道子・名城大学非常勤講師(日政治外交史)だ。 この言葉は、文芸評論家の故・江藤淳氏が1989年の『閉(とざ)された言語空間』(現在は文春文庫)で紹介した。GHQ(連合国軍総司令部)の文書から見つけた江藤氏は、「ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム」と表記した。現在の保守論壇はWGIPと略す。 ◇ 代表的な施策が二つあったとされる。GHQの一部門CI

    GHQが「洗脳」?実態は 賀茂道子さん、保守論壇「自虐史観植え付けた」説を史料で探る|好書好日
  • 「買春する帝国」書評 自由奪う事実上の奴隷制を解明|好書好日

    買春する帝国 日軍「慰安婦」問題の基底 (シリーズ日の中の世界史) 著者:吉見義明 出版社:岩波書店 ジャンル:歴史・地理・民俗 買春する帝国 日軍「慰安婦」問題の基底 [著]吉見義明 慰安婦のことを知らない若い人が増えている。中学の歴史教科書から慰安婦の記述がほぼ消えたためだ。歴史修正主義的な言説があふれる今、年長者の認識も怪しい。あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」の件も歴史認識の問題と当然関係しよう。 書はそんな心許(こころもと)ない状態のこの国で、私たちが知っておくべき日の性買売の実態を、最新の研究成果もふまえて広く深く解き明かした労作である。対象は幕末から売春防止法の施行(1958年)まで。議論するならこのくらいは押さえておこうよ、という最低限のラインである。 国際社会へのデビューに際し、1872年、明治政府は人身取引を禁止する芸娼妓(しょうぎ)解放令を出す。

    「買春する帝国」書評 自由奪う事実上の奴隷制を解明|好書好日
  • 「ツンデレ」は中国語で何と呼ぶ? 中華圏の濃すぎるオタク用語を翻訳した“怪辞書”「中華オタク用語辞典」|好書好日

    はちこ「現代中華オタク文化研究会」サークル主 1990年生まれ。中国江蘇省出身。日のアニメ好きが高じて2011年に来日。名古屋大学大学院修士課程を修了後、都内勤務。書の元となった同人誌中華オタク用語辞典」を執筆。17年にコミケデビューして頒布し評判を呼んだ。今も中華オタク関係の同人誌に執筆。 ――書は、中華圏で使われる漫画やアニメ、アイドルといったジャンルのオタク用語やネットスラングを和訳した「中日辞書」です。語義に加え、オタク同士の会話やネットの書き込みなどを模した例文や、中国オタクに関する解説文が見どころです。「萌豚」は「萌え系コンテンツに夢中な男性オタク」、「腐女」は「腐女子」など、日語のスラングとほぼ同じ言葉も多いですね。まさか、ドラゴンボールの名台詞「戦闘力たったの5…ゴミめ…」(战五渣 ヂャンウーヂャ)が海の向こうでも浸透しているとは……。オタクあるあるネタ満載の例

    「ツンデレ」は中国語で何と呼ぶ? 中華圏の濃すぎるオタク用語を翻訳した“怪辞書”「中華オタク用語辞典」|好書好日
  • 「性器のナゾ」に学習漫画が迫る!? 描写はリアル、でもあくまで科学本「ダーウィンの覗き穴 虫たちの性生活がすごいんです」|好書好日

    日高トモキチ(ひだか・ともきち) 漫画家・イラストレーター 宮崎県出身。学習参考書の編集者を経て現職。生き物について取材したノンフィクションの漫画に、小説も手掛ける。主な著作に『トーキョー博物誌』(産経新聞出版)、『水族館で働くことになりました』(KADOKAWA/メディアファクトリー)、小説では『里山奇談』(KADOKAWA、共著)など。 ――書はオランダ・ライデン大学の生物学者、メノ・スヒルトハウゼン教授による一般向け学術書の日語版「ダーウィンの覗き穴――性的器官はいかに進化したか 」(田沢恭子訳、早川書房)を、漫画家の日高さんがコミカライズしたものです。原作では文章で説明されている「なぜ私たちは性交するのか」「生殖器が多様な形状に進化した理由」といった性科学の謎について、解説役のキャラクター同士の掛け合いと、動物やヒトの生殖器や性交を図解したイラストを交えて16回に分けて説明して

    「性器のナゾ」に学習漫画が迫る!? 描写はリアル、でもあくまで科学本「ダーウィンの覗き穴 虫たちの性生活がすごいんです」|好書好日