映画「この世界の片隅に」は「穴ぼこ」がある映画でした。頭の中で「欠けてるのは原作のアソコとアソコ」と補完し、いわば穴をスキップして進めました。公開中の「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」は「でこぼこ」がある映画。穴は埋まりましたが「原作とは違う解釈」がいくつも出っ張っていて、気になるのです。最大の出っ張りは、主人公のすずが夫の周作に「いや」と言う閨(ねや)の場面。今回の本欄は少々オトナな内容なので、よい子のみんなは読まないでね。 映画自体は前作も今作も、情緒喚起力にただならぬものがあるのでグイグイ引き込まれます。約40分長くなった「さらにいくつも」版で加えられたこのセックスシーンも同様で、短く控えめな描写ながら生々しくてドキドキさせます。その一方で(それゆえに、と言うべきか)気になるんです。こうの史代さんによる原作マンガとの違いが。それゆえ生まれる周作との関係性と、すずの人間像とが。