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bookとreviewに関するprisoneronthewaterのブックマーク (128)

  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第9講:存在の連鎖の時間化 (これで全部終わり!) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    はいはい、ちょっとだけ残すのもいやだったので、やってしまいましたよ。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』全訳 (pdf、3.3MB) これまでずっと続けてきたラヴジョイ、これで注も含めて全訳あげました。詩とか、長々しい引用とかはあまりに面倒なので訳しておりませんが、詩は苦労してそれっぽく訳したところで、何か追加でわかるわけではないし、引用部分も決して追加情報があるわけではない。文中でラヴジョイが語ったことの裏付けでしかないので、まあ許しなさい。 cruel.hatenablog.com これで一通り訳し終わったが、もちろん内部利用用なのでみなさん勝手に読んではいけませんよ。 9章:存在の連鎖の時間化 さて残っていた第9章は、存在の大いなる連鎖の時間化、というもの。ここはそれなりにおもしろい。が、テーマは簡単。静的な存在の連鎖/充満の原理は、ライプニッツ&スピノザの章で見たように、決定論的な世

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第9講:存在の連鎖の時間化 (これで全部終わり!) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイとマッカーシー『ステラ・マリス』:異世界性とこの世性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    先日からずっと、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の勝手な翻訳とまとめをやっているのはご存じのとおり。 cruel.hatenablog.com 残った一つの章は、とっても大事なんだけれど長いので、仕上がるのはかなり先になるとは思う。が、それとは別の余談。 先日、コーマック・マッカーシー遺作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』邦訳が出た。 で、決してわかりやすいではないので、ほとんどの人はたぶんチンプンカンプンだと思う。これまでに出てきた感想を見ても、読点のない乾いた文体と残酷な世界が〜、原爆が〜、みたいな訳者あとがきの反芻みたいな感想文ばかりで、あんまりおもしろい書評は見ていない。これは別に日だけではなく英語のレビューとかでも同様。 たぶんこのままだと、みんな敬遠してだれも何もきちんとしたことを言わないままになっちまうといやだな、と思ったんだ。昔、朝日新聞の書評委員だった頃、気楽に読め

    ラヴジョイとマッカーシー『ステラ・マリス』:異世界性とこの世性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第7講:18世紀楽天主義 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ラヴジョイ、短い章なのですぐ終わってしまいました。 cruel.hatenablog.com ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』(山形浩生訳) 楽天主義というと、ヴォルテール『カンディード』に出てくるパングロス博士の、「物事はすべて現状通り以外の形ではありえなかった」「現状はすべて最高よ、悪いことがあってもそれも含めて、現状が最高なのよ」というおめでたい論者のように思える。 なんかの芝居で演じられたパングロス博士。 そして、その通りなのだ。楽天主義はまさにそういう議論。 ただしそれは別に、その人たちが陽気で楽天的だったということではない。神は善で、善を最大化するように行動するから、現在以上に善の多い世界はあり得ない、という結論が先にあって、よって現状以外はあり得ず、悪いことも善を最大化するものだ、という議論。一歩まちがえれば、(いやまちがえなくても)「もう世の中どうしようもないよ、改善の余地

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第7講:18世紀楽天主義 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ラヴジョイ、ちょろちょろ続いております。 cruel.hatenablog.com で、第5章にやってきました。この章はライプニッツとスピノザという大物が登場するのでなんかすごい哲学的な大バトルが出て、存在の大いなる連鎖という思想そのものに関わる話になるんじゃないかなー、と期待していたら、意外につまんなくてちょっとがっかり。 (ライプニッツとスピノザ) まあ、まずは訳を読んで下さい。もう章ごとに切るのは面倒だからやめた。全文あげておくから読んでね。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』(山形浩生訳) パワポも一応つくりました。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ by @8721924829 しかしこれは、パワポ見るまでもなく実はかなり中身はシンプルです。この章の基的な話は次の通り。 ライプニッツは、充満の原理から、宇宙の万物は理由があって必然的存在するという「充

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第5講:ライプニッツ&スピノザ - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』

    ずいぶん間が空いた山形月報ですが、今回は文学好きの間では話題ながらも難物と言われるコーマック・マッカーシー遺作2部作を中心に、ホームズの格闘術と、財政金融政策の話。文学にネタのような真面目な格闘術、さらには経済話といつもながらバラバラですが、さて、どんな話になるでしょうか! ずいぶん間が開いた (一年以上かよ!)。いつもながら、採りあげるつもり満々のが一冊あって、それをどう料理しようか考えるうちに、ずるずる先送りになってしまうというありがちな話ではあります。 で、今回扱うのは、それではない。 コーマック・マッカーシーの遺作となる2部作『通り過ぎゆく者』『ステラ・マリス』だ。 マッカーシー『通り過ぎゆく者』 コーマック・マッカーシーは、現代にあって、当の意味での文学を書けた数少ない作家の一人だ。そして、それは文学というものの意義が変わってきた現代では、決して容易なことではない。 村上龍は

    マッカーシー遺作、護身術バリツ、財政金融政策 - Cakes連載『新・山形月報!』
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    はい、ラヴジョイの続き。 cruel.hatenablog.com 今回は、18世紀に、存在の大いなる連鎖が流行って、それが人間の立ち位置についての考え方に影響し、格差社会の弁明まで出てきました、という話。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置 比較的中身は薄いというか、言われていることはそんなに意外ではなく、ああ、こういう考え方も出てくるかねえ。というもの。全体として、存在の位階があってそれが重要なんだから、人間は自分が特別と思うな、自分のポジションだけ守ってろ、改善しようとするな、という現状肯定イデオロギーが出てきた、ということになる。それぞれについて、いろんな詩人や評論家があれこれ言っているのを引用するけれど、ざっと見ておけばいい感じ。それが18世紀社会の維持に決定的な影響を持っていた、という感じではない。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第6講:18世紀の人間の立ち位置 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ラヴジョイの続きです。 cruel.hatenablog.com 最後の第11講では、この存在の連鎖とか充満の原理、さらにその元になっている神様の異世界性とこの世性の両立が不可能だというのがあらわになって、それが一気に忘れ去られる様子が述べられていた。 cruel.hatenablog.com 今回の第10講は、その一つ手前ということで、その解体の先触れみたいなのがロマン主義として出てきたか、あるいはこの世性みたいなのが嫌われて、全然別の世界を夢想する異世界性指向みたいなのがロマン主義になったとかいう話かなー、と思っていた。 結果で言うと、ぜんぜんちがった。むしろ、存在の連鎖と充満性を強調するような働きが、18世紀ロマン主義として出てきた、というのが主旨となる。まずはお読みあれ (ってきみたち読まないのは知ってるけど)。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理 啓

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第10講:ロマン主義と充満の原理 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第4講:充満の原理と新しい宇宙観 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    はいはい、やめようかなと思っていたラヴジョイですが、第2講で舞台設定ができて、第11講でいきなり結論になってしまうのは、ちょっとつまらない。その途中でどんな具合で論が進むかをみるために、多少は土地勘のある (他の部分よりは:スピノザやライプニッツは、そんなに読んでないよー) 宇宙論のところをやってみました……がその前に少しおさらいから。 cruel.hatenablog.com 前置き:「異世界性」と「この世性」のおさらい 第2講では、書で扱う主な観念の源である、「異世界性」と「この世性」というのが示された。これはどっちも、神さまの位置づけの話。 異世界性ってのは、神さまの世界はぼくたちなんかの及びもつかないまったくの別世界だ、という話だった。神さまはスーパーえらいし、人間なんかの想像力なんかとても及ばないパワーもあるし能力もあるし神さまですから、もちろん善の親玉。その世界は隔絶し、完璧

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第4講:充満の原理と新しい宇宙観 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』補論:現代に生きる存在の連鎖 (ちがう) - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    昨日、ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講を見て、その滅多斬りぶりがスゲえという話をした。 cruel.hatenablog.com 一晩寝ると、なおさらすごいな、と思う。ふつう、ここまでやらないと思うのだ。普通はどうするだろうか? なんとかポジティブに終えたいと思ってしまうのが人情だろう。そしてその簡単な手はすぐに思いつく。まず、最終回の題名を変えよう。 「現代に生きる存在の連鎖」 とかいうタイトルにしましょう。そして、全体の話の構成はこんな具合にしよう。 (ヤコービが〜、シェリングが〜、で、全部破綻しましたという話) 確かに、こうした神学や哲学の分野においてはこの観念は破綻し消えた。 しかしそれは偉大な敗北、豊穣で多産な破綻だったんだ。 だって、世界に一貫した合理性があるという確信は現代科学に受けつがれたんだ! さらにベルグソンやホワイトヘッドみたいな現代の人々にも影響は見られる。

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』補論:現代に生きる存在の連鎖 (ちがう) - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の翻訳を始めた話はした。 cruel.hatenablog.com 素直に第2講を初めて、半分くらいはおわっているんだけれど、そもそもこの話がどこへ行くのか知りたくて (はい、推理小説もまず最後を読むタイプです)、最後の第11講をあげてしまいました。 ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』第11講 (最終回) もちろん、このpdfを読むとそれなりにウダウダしい。だが、そこで言われていることは、第1講と同じでとてもシンプルではある。それはつまり、以下の通り: 「存在の連鎖」という観念は最終的に、二千年かけて詰めていったらボロボロでまったく整合性がないことが明らかになった。 だから破綻して、すると一気に忘れられてしまった。 思想そのものの現代的な価値はまったくない。 ただこういう変なものにハマる精神の働き (すでに蒸し返すバカも出てる) の記録という意味はあるかも。

    ラヴジョイ『存在の大いなる連鎖』の最終講:存在の連鎖は破綻した無意味な思想 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • 安倍晋三氏が批判を受け入れてなお助言を求めた「経済ジャーナリスト」の一冊 | レビュー | Book Bang -ブックバン-

    著者は日の経済ジャーナリストを代表するひとりだ。個人的には「最も優れた」という形容詞をつけたい。日の政官財の欲望渦巻く世界、ワシントンでの覇権国家アメリカの生々しさ、打算に秀でた中国政治家たち、そして長期停滞の舞台裏までを、現場での取材を豊富に交えて描き、現代史の証言として面白い。 田村氏が経済ジャーナリストとして最も優れているのは、現場体験を踏まえ、客観的なデータとそれを的確に読み解く経済学の基礎がしっかりしているからだ。当たり前のようでいて、経済学を適切に現場で応用できる記者は日にはほとんどいない。日の経済記事の後進性はひどいものなのだ。 取材対象との距離感も素晴らしい。日の記者たちはしばしば取材対象と懇意になりすぎてしまい、忖度を重ねる「御用記者」が多い。いまでも財務省のご機嫌をとるかのような緊縮財政記事ばかり書いている。このような安易な姿勢とはきっぱり決別しているところ

    安倍晋三氏が批判を受け入れてなお助言を求めた「経済ジャーナリスト」の一冊 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
  • オーウェル『1984年』序文からわかる、ピンチョンのつまらなさとアナクロ性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    Executive Summary トマス・ピンチョンのオーウェル『1984年』序文は、まったく構造化されず、思いつきを羅列しただけ。何の脈絡も論理の筋もない。しかもその思いつきもつまらないものばかり。唯一見るべきは、「補遺;ニュースピークの原理」が過去形で書かれていることにこめられた希望だけ。だが、考えて見れば、ピンチョンはすべて雑然とした羅列しかできない人ではある。それを複雑な世界の反映となる豊穣な猥雑さだと思ってみんなもてはやしてきた。だが実はそれは、読者側の深読みにすぎないのかもしれない。そしてその深読みが匂わせる陰謀論が意味ありげだった時代——つまり大きな世界構造がしっかりあって、裏の世界が意味をもった60-80年代——にはそれで通ったのに、1990年代以降はもっと露骨な陰謀論が表に出てきてしまい、ピンチョン的な匂わせるだけの陰謀論は無意味になった。それがかれの最近の作品に見られ

    オーウェル『1984年』序文からわかる、ピンチョンのつまらなさとアナクロ性 - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • 「社会に埋め込まれた経済」で格差を克服? - 山形浩生の「経済のトリセツ」

    ポラニー『ダホメ王国と奴隷貿易』、Kindle版にして少しお金稼ごうぜと思って、ちょっと見直しておりました。 cruel.hatenablog.com ポラニーがこので言っている「社会に埋め込まれた経済」というのは、ピケティが『資とイデオロギー』(もうすぐ出ます!) でも引き合いに出していて、資主義と市場経済の暴走を許してはいけない、それは格差増大をひたすら肯定して不平等な社会の到来を招いてしまう、経済活動はもっと社会に奉仕するものとして、社会に埋め込まれるべきだ、という主張がポラニーの、特に『大転換』を軸に述べている。 でも今回思ったんだけれど、この議論というのは成り立つんだろうか。ポラニーに準拠する限り、非常に歪んだ議論なのでは? まず一つ。経済が社会に埋め込まれた状況としてこのダホメで挙がっているダホメ社会。これはそんな、格差のない平等社会だったっけ? もちろんちがう。王様が

    「社会に埋め込まれた経済」で格差を克服? - 山形浩生の「経済のトリセツ」
  • 書評 「「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた」 - shorebird 進化心理学中心の書評など

    「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた 「ネコの空中立ち直り反射」という驚くべき謎に迫る 作者:グレゴリー・J・グバーダイヤモンド社Amazon 書は物理学者であるグレゴリー・グバーが「ネコひねり問題」について語ったになる.「ネコひねり問題」というのは,「ネコは逆さ向けにして落とされても空中でうまく身体をひねって脚から着地するが,物理学的に考えてみて,なぜ,どのようにしてそのようなことができるのか」という問題だ.書店でこのを見かけて最初に感じたのは,ネコは頭からひねってその後身体全体の向きを変えることができるが,それだけの問題をどうやったら一冊のにまで膨らませることができるのだろうかということだ.そしてそれに興味を引かれて購入して読んでみたものだが,この「ネコひねり問題」には何重にも絡まる謎があって,どうしてなかなか奥深く面白い.原題は「Falling Felin

    書評 「「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた」 - shorebird 進化心理学中心の書評など
  • 九龍城塞・スマートシティ・民主主義 - Cakes連載『新・山形月報!』

    復活も一時の思いつきかと言われていた「新・山形月報!」、さすがに2回目くらいは続く模様。今回は香港の魔窟と言われた九龍城砦をめぐるとスマートシティ、さらにはプーチンの戦争と民主主義についてあれやこれや。さて、どんな話になるでしょうか! 以前は、毎年二、三回はでかけていた香港も、2019年からの逃亡犯引き渡し反対運動に端を発するデモの騒乱、さらにはその後のコロナで、もうまったく行かなく/行けなくなってしまった。最後に行ったのは2019年の末か…… そんな香港に、この4月あたりに久しぶりに行けそうなんだが、楽しみな一方で恐いような。2023年春のいまは、もう渡航制限は解除され、すでに完全に往き来できる状態になっているのだけれど (ただし入るときに抗原検査の結果は見せねばならない)、この数年でもう都市としての位置づけが完全に変わってしまった。かつては、香港というのはそれに隣接する深圳との対比で

    九龍城塞・スマートシティ・民主主義 - Cakes連載『新・山形月報!』
  • 読書メモ:『現代思想入門』 - 道徳的動物日記

    現代思想入門 (講談社現代新書) 作者:千葉雅也 講談社 Amazon 大学生から大学院一年生の頃までのわたしはいっちょまえに「哲学」や「思想」に対する興味を抱いており、哲学書そのものにチャレンジすることはほとんどなかったが、様々な入門書は読み漁っていた。現代思想については難波江和英と内田樹による『現代思想のパフォーマンス』でなされていた紹介をもっとも印象深く覚えており、次点が内田樹の『寝ながら学べる構造主義』や竹田青嗣の『現代思想の冒険』。個別の思想家についてはちくま新書の『〜入門』やNHK出版の『シリーズ 哲学のエッセンス』を読んでいたが、とくに後者についてはあれだけ何冊も読んだのに一ミリも記憶が残っていない。そして、修士論文を書くために英語圏の倫理学や政治哲学のをメインに読むようになってからは現代思想に対する興味はすっかり薄れて、以降ほとんど触れなくなってしまった。 千葉雅也による

    読書メモ:『現代思想入門』 - 道徳的動物日記
  • インセンティブから目を逸らして社会を語るな(読書メモ:『自己責任の時代:その先に構想する、支えあう福祉国家』) - 道徳的動物日記

    自己責任の時代――その先に構想する、支えあう福祉国家 作者:ヤシャ・モンク みすず書房 Amazon タイトルが想像できるように、近年に蔓延している(とされる)、いわゆる「自己責任論」を批判する。 また、著者のヤシャ・モンクの教師のひとりがマイケル・サンデルであるらしく、「謝辞」でも真っ先にサンデルの名前が挙げられている。 そして、このの内容も、ベストセラーになったサンデルの『実力も運のうち』とかなり近い。あちらは「能力主義」を批判するであったが、かなりの部分までは「自己責任論」批判と重なるものであった。主に批判する思想家がジョン・ロールズであるところも似ている(サンデルはフリードヒ・ハイエクも強めに批判していたのに対してモンクは運の平等主義者を批判しているところに違いはあるが)。政治家などの発した世俗的な言葉を引きながら「最近ではこんな風潮があります」と紹介しつつ、ロールズなどの思

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    prisoneronthewater
    prisoneronthewater 2023/02/12
    "懲罰や恩賞の基準を提示することなく民主的討論や共通善に丸投げすれば批判を回避することはできるかもしれないが、それは社会像を提案するという政治哲学者の務めから逃げているだけなのだ。"
  • 神殺し・社会主義モダニズム・ウクライナ - Cakes連載『新・山形月報!』

    なぜかいきなり復活した「新・山形月報!」、今回はバルガス=ジョサ『ガルシア=マルケス論:神殺しの物語』、『ソビエトアジアの建築物』、小泉悠『ウクライナ戦争』です! 半世紀ぶりに刊行された幻の名著にリアルタイムの戦争分析と社会主義モダニズム建築についてあれやこれや。さて、どんな話になるでしょうか! お久しぶり。2022年はじめ、この新・山形月報が終わるとき、なんとか間に合わないかなと思って待っていたがあって、それがこのバルガス=ジョサ『ガルシア=マルケス論:神殺しの物語』だった。 バルガス=ジョサ『ガルシア=マルケス論:神殺しの物語』 この、知る人ぞ知る史上最初期 (1971年刊) にして最強のガルシア=マルケス論として名高い一方、その後バルガス=ジョサとガルシア=マルケスが特にそのキューバをめぐる政治的見解の相違から仲違いして、その後バルガス=ジョサがガルシア=マルケスをぶん殴る事件

    神殺し・社会主義モダニズム・ウクライナ - Cakes連載『新・山形月報!』
  • 世代を超えた経済論壇エース同士の対談 | レビュー | Book Bang -ブックバン-

    自由と民主主義は、日や欧米の多くの国を支える価値観だ。だが、ロシア中国などの権威主義国家の台頭や、また既得権益を守るさまざまな集団の抵抗によって、この価値観は危機に直面している。社会は分断され、意見の対立が激化することで、自由と民主主義という共通価値がいまや失われつつある。この自由と民主主義の危機的状況とそこからの打開策を、岩田規久男・柿埜真吾『自由な社会をつくる経済学』は、対談形式によってわかりやすく解説している。岩田は、デフレ不況の脱却に貢献してきた経済学者(前日銀副総裁)であり、柿埜はその若き後継者だ。世代を超えた経済論壇のエース同士の対談という点でも面白い。 「歴史を顧みれば、人類史の中で自由な社会は原則ではなく常に例外だった」とする著者たちの問題意識は切実だ。社会が油断すれば、政治や経済活動、そして表現や思想の自由もわれわれはあっという間に失いかねない。しかも日では「リベラ

    世代を超えた経済論壇エース同士の対談 | レビュー | Book Bang -ブックバン-
  • 「だれを好きになるか」を批判の対象にしていいのか?(読書メモ:『すごい哲学 世界最先端の研究が教える』 - 道徳的動物日記

    世界最先端の研究が教える すごい哲学 総合法令出版 Amazonしてもらったので読んだ。十数人以上の若手日人哲学者が「サステナブルなファッションを選ぶにはどうしたらいいか?」や「小説を読むことで人はやさしくなれるのか?」といった具体的かつ詳細なトピックについて、(主に海外の)最新論文を紹介しつつ3〜5ページで短く論じる、という。 全体的に執筆者たちは自分の書いているトピックについて距離がとれており、冷静であっさりした文体が多い。「まえがき」では「少し変わった哲学の入門書」とされているが、哲学の考え方や方法を体系的に学べる教科書といったものでもない。全体的なとりとめのなさから、「哲学・倫理学の与太話集」といった表現のほうが合っている気もする。 とくにわたし自身の生活や人生経験に関わるものとして興味のあるトピックを挙げると、「マッチングアプリで好みでない人のタイプを書くのは差別か?」

    「だれを好きになるか」を批判の対象にしていいのか?(読書メモ:『すごい哲学 世界最先端の研究が教える』 - 道徳的動物日記