かつて国のハンセン病隔離政策に協力した真宗大谷派。東海地方の住職たちが教団の負の歴史に向き合い、療養所訪問と入所者との交流を四半世紀にわたり続けている。らい予防法廃止とそれを受けた教団の謝罪から20年。今なお出身地を明かせない人もいて、隔離の爪痕はあまりに深い。 「南無阿弥陀仏……」 骨になっても療養所を出られなかった人たち、3700人余りの遺骨が眠る納骨堂前で念仏が唱えられた。10月下旬、東海地方の住職や市民でつくるハンセン病学習グループ15人が、国立療養所・長島愛生園(岡山県瀬戸内市)を訪れた。納骨堂は園がある島の高台にある。 園内に1泊2日する日程では、21歳で愛生園に隔離され、今も園で暮らす津市出身の田端明さん(97)の講話を聞いたほか、島に隔離した患者の消毒や身体検査をした収容所などの施設を巡った。夜の酒席では入所者4人と夜更けまで懇親を深めた。 今回で24回目。愛知県西尾市の大
願はくは 花の下にて 春死なん そのきさらぎの 望月のころ 桜と月をこよなく愛した平安末期の歌人・西行は、自らの死に場所の希望をこう詠んだ。実際、西行は文治6年2月16日(1190年3月31日)に亡くなったというから、その願いは叶ったといえよう。 2015年国勢調査速報によると、65歳以上の高齢者人口が3342万人と、総人口の4分の1超の26.7%に達し、日本は超高齢化社会に突入した。週刊誌は「やってはいけない手術」「飲んではいけない薬」といった医療関連特集をしつこいほどに続けている。なぜなら、売れるからだ。ひところは「一銭もかけない死に方」などの死に方特集が続き、今は老人の性特集が定番となっている。 そんな折、「在宅みとり」を推進する厚生労働省が7月6日、「在宅医療にかかる地域別データ集」を公表した。その中で、在宅死の割合を自治体別にまとめている。14年の人口動態統計のデータを基に集計し
全日本病院協会(東京)が、厚生労働省作成の高齢者に関する「身体拘束ゼロへの手引き」の達成状況を調査した結果、回答があった約680の病院や介護施設の6割超が、「体や手足をひもで縛る」など原則禁止として例示された11行為のいずれかを行うことがあるとしたことが28日、分かった。このうち「一般病棟」は9割超が「ある」と回答、「介護施設」は3~4割だった。 同協会の木下毅常任理事は「身体拘束を受けることで気力が失われ、症状が悪化する恐れもある。施設の管理者が意識を高め、現場職員への指導を徹底する必要がある」と指摘した。
終の棲家とも称される特別養護老人ホーム(特養)。だが、緩やかに状態が低下していく入所者を、静かに看取(みと)れるかどうかは、施設の力量による。医師との協力が十分でないと、看取り間際の高齢者を救急車で病院に運んだり、呼吸停止後に運んだりすることもあるという。早急な環境整備が求められる。(佐藤好美) ◇ 関東地方のある特養は最近、入所者をホームで看取れるようになった。健康管理にあたる「嘱託医」を変更。新しい嘱託医が日頃の健康管理の延長線上で臨機応変にホームに来て、死亡診断書を書いてくれるようになったからだ。 それまでの嘱託医は、週1回の定期訪問には来てくれたが、臨時の訪問はできなかった。だから、入所者の状態が低下して最期の時が近づくと、心肺蘇生(そせい)をしながら救急車で嘱託医の勤務する病院に搬送。そこで看取ってもらっていた。 過去10年の間には、入所者の呼吸が止まった後、施設の車で運んだこと
1980〜90年代に社会問題化した「薬害エイズ」の被害者を支援するため、厚生労働省は「血友病薬害被害者手帳」を作った。薬害エイズ訴訟の和解から今月で20年。医療に加えて福祉や介護など公的サービスも必要になっており、被害者が適切にサービスを受けられるよう手帳を発行した。 薬害エイズ被害者は、国のHIV(エイズウイルス)感染者についての調査研究に協力すれば健康管理費用が支払われたり、生活に支障があれば障害年金を受給できたりといった公的サービスを受けられる。 しかし、被害発生から時間が経過し、制度をよく知らない自治体や医療機関の職員が増加し、サービスを利用する際に被害者が制度について窓口で説明しなければならないケースも増えていた。
あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。 医療・介護 大転換 2017年5月に「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法」が成立し、18年4月からは介護保険と医療保険のサービス内容が改定された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。 バックナン
誰もが迎える人生の最終段階。病気が治る見込みがない場合に、医療やケアの方針をどう考えたらいいのだろう。本人の意思を尊重して話し合うように厚生労働省のガイドラインができているものの、実際には多くの課題があるのが現状だ。 東京都国分寺市の住宅街。2月9日の午後、介護ベッドで休んでいた90代の女性の自宅を医師と看護師が訪ねてきた。 「こんにちは」。医師の宮崎之男(ゆきお)さんが声をかけると、女性が少し目を開けた。60代の長男夫妻は「開けたね」とにっこり。宮崎さんは「足のむくみはないです。状態はいいです」。 女性は3年前から新田クリニック(国立市)の訪問診療を受けている。レビー小体型認知症で実際にはいない虫が見えるなどの幻視が出ていた。3年前は車いすで外出することもできたが、その後眠っていることが多くなり、意思疎通も難しくなった。要介護度は最も重い5だ。 長男は「自宅でみていると毎月、衰えていくの
最期まで生活重視、痛みも軽減 痛みのコントロールが必要ながんや難病など、医療と介護のいずれもが必要な人の居場所が少ないのが現状だ。特別養護老人ホームでは断られがちで、長期療養の病院は「住まい」からは遠い。「医療」「介護」「住まい」の機能を併せ持つ場所は、どう整備すればいいだろうか。(佐藤好美) ◇ 食器を洗う音や掃除機をかける音-。耳になじんだ音が聞こえてくる。神奈川県小田原市にある「ファミリー・ホスピス鴨宮ハウス」は、3階建ての大きな家だ。がんや難病の人、人工呼吸器や在宅酸素をつけた人など、医療の必要な人に、看護師と介護職が24時間態勢で対応する。
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