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ブックマーク / sakstyle.hatenadiary.jp (11)

  • 中島一夫『収容所文学論』 - logical cypher scape2

    これが批評って奴なんだなーと思った。 いわゆる批評と呼ばれる、柄谷行人とかすが秀美とか読んだことないからなー。 かなり全般的に、マルクスの価値形態論に依拠していて、それを使って色々と読んでいくというのは、なんか面白いなあと思う。何でマルクスの貨幣論が使われるの?*1 とか思うけど、何か確かにつじつまがあってるような気がして、こういうのが批評なんだろう、とw 媒介と責任――石原吉郎のコミュニズム ラーゲリで強制労働させられていた詩人、石原を論じる。 まずは「集団化」と「平均化」を区別する。「集団化」は拒みつつ「平均化」に平等を見出す。そして、交換の不均衡とか単独性とかから、ラーゲリ*2の中で単独者として生きることがどういうことかを炙り出していく。 プロレタリアートはどこに行ったか――パゾリーニの暴力 イタリアの詩人パゾリーニの撮った映画『王女メディア』の作品論が面白かったかな。 その名の通り

    中島一夫『収容所文学論』 - logical cypher scape2
    shimomurayoshiko
    shimomurayoshiko 2016/05/23
    某氏が石原論の最高の部類と挙げてた気がするのだがようやく読んだ。興味深く読んだ。
  • 石川博品『後宮楽園球場』 - logical cypher scape2

    前々から「今度読もう」「今度読もう」と思っていて、ある時、「今が今度だ」と思ってポチったら、まさにその日に「打ち切りが決まったらしい」という情報を知る羽目になって、タイミングがいいんだか悪いんだかという感じで読んだ 女装して宮廷のハレムに潜り込んだ少年が、ハレムの美少女達と野球をするという物語 とにかく野球をする、以上。 これはなんかきっとすごい小説なのであるが、自分はこのすごさをうまく把捉しきれなかったところがある。 耳刈ネルリは作品のカオスさをそのままカオスだぜーって出してきて、テンションも高いので、読んでいるこっちも「わーい」ってそのまま楽しめるのだが、こちらの作品は、来カオスなはずの設定をまるっきり当然であるかのように出してくる。 で、1巻としては話はきりのいいところになっているものの、全体的に見れば、話が終わっていない。 なので、「これは一体今後どうなるんだ?」という思いが強

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  • 『知の逆転』 - logical cypher scape2

    ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソンへのインタビュー集 この中で唯一名前を知らなかったのがトム・レイトンなのだけど、その章が一番面白かった。 数学者であり、なおかつアカマイという会社を経営している。 アカマイなんて名前も聞いたことなかったけれど、その事業内容も、立ち上げ時の話も面白かった。 インターネットのアクセスを安定させる仕事グーグルだったり何だったり、アカマイと契約しているとこのサイトに僕たちがアクセスしているとき、実際には、例えばグーグルのサーバに直接アクセスしているわけではなく、最寄りの(例えば日の)アカマイのサーバにアクセスしているらしい。 あと、ワトソンとかサックスとか面白かったかなあ ダイアモンドとかミンスキーとかがあまり面白くなかった 教育について、宗教について、インターネットに

    『知の逆転』 - logical cypher scape2
  • 藤真千歳『スワロウテイル人工少女販売処』 - logical cypher scape2

    以前から気になっていたタイトルではあったのだが、あんまり優先度が高くなくて読んでいなかったのだが、『SFマガジン11月号』の前島賢による書評を見て、急遽読むのを決めた。 そしてそれは大当たりであった。 なんというのか、俺、こういうラノベが読みたかったんだよっていう感想w*1 まあ、自分がラノベ読者だったのは、えーと、10年前? とかなのでw 俺が「これラノベっぽい」って感じたのと、世間一般の、特に最近の「ラノベっぽさ」っていうのは違うと思うけど。 例えば、「在東京自治区国家公安委員会人工知性危機対策時限特別局」通称「赤色機関」というのがあって、赤いランプをつけてるから赤色なんだけれど、名前の英字の頭文字をとると、Anti-CYANとなっていて、それが「赤色機関」のルビとしてふられているのとか あとは、人工妖精(フィギュア)と呼ばれるアンドロイドが出てくるのだけど、4つの気質、すなわち水気質

    藤真千歳『スワロウテイル人工少女販売処』 - logical cypher scape2
  • 伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』 - logical cypher scape2

    なかなかどう感想を言えばいいのか難しい、のは多分この作品があまりに注目を浴びているからだ。 面白かったのは間違いないのだが、じゃあこれが伊藤計劃や円城塔のこれまでのテーマを昇華するような傑作なのかというとそこまで感じなかったのも正直なところなのだけど、一方で一読しただけではちゃんと掴めていないのではないかという疑念がぬぐえず、再読してから考えることにしたい。 とかく、色々なネタが詰め込まれているので、もう一度読み直したいなと思わせるのは確かである。 何やら堅苦しい始まり方になってしまったが、 既に何度か読んでいるプロローグを読み終わり、第一部を開くときの興奮といったら! 伊藤計劃と円城塔という2人の作家が、一般的に似ていると思われているのか、似てないと思われているのかよく分からないけれど、やはりこの2人は似ているのだと思う。 一部で、伊藤と円城の文体が噛み合ってない、円城が色々と無理をして

    伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』 - logical cypher scape2
  • 宮内悠介『盤上の夜』 - logical cypher scape2

    読み終わった次の日に、直木賞候補になってたよ!!*1 直木賞発表前に直木賞候補作を読んでいたなんで、自分史上初 発売直後から話題になっていたものの、扱われている題材が、囲碁や将棋麻雀といったゲームだということで、ちょっとスルーしていた。 しかし、読んでみたら一気にはまってしまった。 とてもSF的というか、見知らぬ風景を垣間見せられるような作品。 ゲームを極めることによって、我々と同じものを見ても別の風景が見えてしまう人々の話。 しかし、ただ超人たちの話というわけではなく、ゲームと人類についての話でもある。 一種のポストヒューマンだったりシンギュラリティだったりの話だったのかもしれない。 ゲームとは現実を抽象化したものである、などと言ってみたところで、そんなものはゲーム以外にも当てはまるのだから、何の説明にもなっていないが、確かにゲームというのは人類にとって、現実の何らかの部分を反映させた

    宮内悠介『盤上の夜』 - logical cypher scape2
  • 青山拓央『分析哲学講義』 - logical cypher scape2

    ちくま新書から出た分析哲学の入門書。 分析哲学の入門書というと、先日、講談社選書メチエから、八木沢敬『分析哲学入門』というも出ているが、この両者はある意味ではよく似ているし、ある意味では結構違う。 どちらも分析哲学とは何かというところから始め、言語哲学について説明したあと、クリプキを挟んで、心の哲学と形而上学へと至るという構成になっている。 新書と選書という違いはあるが、どちらも大体同じページ数であり、コンパクトながらもぎゅっと詰め込まれている。どちらも入門書として丁寧に書かれていると思う。 両者の共通点として、入門書としては珍しく、筆者の自説が展開されているところもあるだろう。青山におけるそれは後述するが、八木沢では例えば様相実在論の主張などがそれにあたる。 この両者の違いはいくつかあるが、まずは文体の違いが大きいだろう。 心の哲学における機能主義について説明しているところから引用

  • 音楽の哲学シンポジウム - logical cypher scape2

    この三連休のあいだ行われている応用哲学会の1日目において開かれた、音楽の哲学シンポジウムに行ってきた。 哲学者、美学者に加えて、フルート奏者と作曲家を交えた、哲学のシンポジウムとしては異例のメンツによるちょっと実験的な企画であった。 最初はそもそもこの4人話があうのか的な空気もあったのだが、終わってみればとても刺激的な会であった。 以下、自分のノートより。 色々省略しているところもあり、正確な再現ではない。 提題 最初は、今井晋による音楽の哲学と音楽の存在論についての簡単な紹介 音楽の哲学は、「ここ数十年の分析美学でもっとも発達した領域」であり、日常的な経験と哲学的な問題が切り結ぶのが特徴的とされる。 様々な論点があるが、その中でもここでは音楽の存在論についてピックアップ 音楽に対して抱く直観と形而上学における存在論的カテゴリーとのバランスをとることが目される フローチャートを用いて、様々

    音楽の哲学シンポジウム - logical cypher scape2
  • 村上裕一『ゴーストの条件』 - logical cypher scape2

    ゼロアカ道場優勝者である村上裕一によるデビュー作。 これで長きにわたったゼロアカ道場企画も当に終結したと言える。 キャラクターというものが現代オタク文化の中で拡散している様をゴーストという概念で捉え直し、そのリアリティを批評している。 三部構成で成っており、第一部はアイドル論から接ぎ木する形でキャラクターについて、第二部は2chやニコニコ動画における創作からゴーストについて、第三部はノベルゲームなどの作品論を通じてキャラクターの生について論じられている。 なんだろうな、自分だったら絶対こうは書かないだろうとも思うのに、それから取り上げられている作品についても知らない*1ものの方が多いのに、すごく共感してしまうというか、考えていることが似ていると感じるところが多かった。 そういう意味で実に刺激的であった。 明晰さを追求する哲学・思考を触発する哲学 - Togetter というのがあって、

    村上裕一『ゴーストの条件』 - logical cypher scape2
  • 三浦俊彦『虚構世界の存在論』 - logical cypher scape2

    分析哲学のアプローチによる虚構世界論。 と言われたところで、ほとんどの人には何のことかさっぱり分からないだろうが、問題設定自体はそれほど難しくない。 哲学には分析哲学と呼ばれるジャンルがある。 このジャンルは、もともと言語哲学というところから端を発しており、文が何を意味しているのか(真か偽か)を明らかにすることを目的の一つとしている。 そんな分析哲学、言語哲学にとって、厄介な文がある。 「シャーロック・ホームズの背中にはホクロがある。」 多分、コナン・ドイルのホームズをどれだけ読んだところで、この文が真か偽か分からないだろう ところで、この文は以下の文とは異なることに注意しよう。 「坂龍馬の背中にはホクロがある。」 やっぱり坂龍馬の伝記をどれだけ読んだところで、多分真か偽かは分からない。 しかし、坂龍馬に関していえば、彼の背中にはホクロがあったかなかったかどちらかである、ということは

    三浦俊彦『虚構世界の存在論』 - logical cypher scape2
  • ソール・クリプキ『名指しと必然性』 - logical cypher scape

    名前の「指示」と同一性について、クリプキの講義を書籍化したもの。 もとが講義であるために、厳密な論証が続くというわけではなく、口語体での説明が書かれている。それ故の読みやすさと読みにくさがある。 フレーゲ−ラッセルから続く「記述説」に対する反論がなされていくわけだが、それに先だって、まず「アプリオリ」「アポステリオリ」と「必然的」「偶然的」といった概念の整理がなされる。 クリプキは、ともすると同義語と使われがちな「アプリオリ」と「必然的」という言葉は区別されなければならないという。「アプリオリ」とは認識に関わり、「必然的」とは一種の形而上学に関わる語である。アプリオリに知られる偶然的な知識もあれば、アポステリオリに知られる必然的な知識もある。後者の代表的なものは数学についての知識である。数学の定理の証明などは、アプリオリに知られることはない。計算などを通じて、アポステリオリに知られる。例え

    ソール・クリプキ『名指しと必然性』 - logical cypher scape
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