蓼食う本の虫は、読む・書くを身近にする文芸Webマガジンです。おすすめの本や創作論、文芸にまつわるニュースをお届けします。Kindleセールや新刊情報なども。 本谷有希子が群像に新作を発表した。2018年3月号だ。 あの芥川賞を射止めた「異類婚姻譚」が群像に掲載されたのが2015年11月号で、それから本谷有希子は小説を発表していなかったから、2年4ヵ月ぶりだ。読んだ。おもしろかった。しかしそれ以上に、とてつもないさみしさが、僕を襲った。なぜさみしかったか。書いてみる。前提として、僕は本谷有希子が死ぬほど好きだ。 あらすじ本谷有希子の新作は、連作短編だった。『静かに、ねぇ、静かに』という題のもと、「本当の旅」「奥さん、犬は大丈夫だよね?」「でぶのハッピーバースデー」の三つの短編が連なっている。 「本当の旅」「本当の旅」の語り手・ハネケンは、友人のづっちん、ヤマコと三人で、クアラルンプールを観