1980年代、パキスタン。自然科学も「イスラーム的科学」として宗教的原理に基づいて解釈されることに危機感を持った、理論物理学者が、現代科学とイスラームはどこに対立があり、… イスラームと科学 [著]パルヴェーズ・フッドボーイ イスラム圏の科学はひどい状況にある。 中世には、停滞するヨーロッパを尻目に世界最先端だった。でも宗教がそこに介入し、物理法則なども神の意志にすぎないとされ、科学を研究するより、神の意志をコーラン解釈から読み取ることが優先された。そしていまや、一部イスラム圏の「科学」と教育の相当部分は、西洋科学をイスラム経典解釈にこじつけて「イスラム的科学」なるものをでっちあげる行為に堕している——。 こうした状況を、世界的な物理学者でイスラム教徒である著者は、深く憂慮し、イスラム社会の大きな停滞要因だと指摘する。だが本書は、イスラム教という宗教を批判するのではない。宗教と科学や理性の