「どうしよ 痴漢された」 Yからのメールは唐突で、明らかに説明不足で、でも私にダッシュさせるには十分な威力があった。 丁度大学帰りだった私は路線を変え、電車の中で無駄にも足踏みを繰り返し、「すぐ行く」とだけメールを送り、駅からは本気でダッシュしてYの家に向かった。 一分でも一秒でも速く、安心させたかった。むしろ私が安心したかった。 私は痴漢に遭ったことがない。 けど、常識的に考えて。痴漢されて喜ぶ女の子なんて、いない。 ちょっと大人しめの子の方がターゲットにされやすいようで、そういう子たちが青褪めた顔で登校してきたと思ったら、沸々と怒りのこもった呪詛をこぼすことがあった(「キモい」「マジキモい」「ひたすらにキモい」などなど)。 見ず知らずの男に、セクシュアルな手付きでカラダを撫で回される。一方的に。 公共の場で、静かに静かに、好きでもない男に蹂躙される。 声も出ない恐怖なのだと、友達は言っ