天皇陛下が長年、「水」の問題に取り組んでこられたことはよく知られている。実は「道」への興味が出発点だった。英国留学の思い出をつづった『テムズとともに』のなかで明かされている。 ▼外に出たくてもままならない幼少時代、よく赤坂御用地内を散策されていた。ある日「奥州街道」と書かれた標識を見つけられ、かつて街道が御用地内を通っていたと知る。学習院大学文学部史学科では、中世の陸上交通を研究するはずだった。瀬戸内海の水運へとテーマを移されたのは、史料の制約によるものだ。英オックスフォード大学でまとめられた英語の論文は、「交通路としてのテムズ川」だった。