「勝ちに不思議の勝ちあり」とは言い得て妙で、形勢の優劣が何かの拍子に入れ替わることがある。プロ野球では戦況を一変させる采配が「マジック」と尊ばれた時期もあった。格言の典拠は江戸期の剣術書という。勝負事の万般に通じる教えだろう。 ▼将棋の羽生善治棋聖が25歳で7冠を独占したのは平成8年。「意表の一手」で劣勢を優勢にひっくり返す手際のよさは羽生マジックと呼ばれた。ご当人は「当たり前の手を指しただけ」とクールだったが、18年後の今も4冠を保持する姿は、驚嘆のひと言に尽きる。 ▼棋士という学究的な仕事について先日、NHKの番組で語っていた。「小さな違いを積み上げて大きな進歩につなげれば」。その羽生さんが史上4人目の通算1300勝を挙げた。勝率は7割2分3厘。セ・リーグを3連覇した巨人でさえ今季の勝率は6割弱だ。 ▼衆院解散の「勝負手」に出た安倍晋三首相もあやかりたい数字だろう。解散風が永田町を吹き