イスラエルの総選挙が来年3月に前倒しで実施されることになった。同国では、国を導く理念である「シオニズム」の捉え方が変質しつつあり、今後の方向を占う選挙として注目されよう。 シオニズムは、ユダヤ人たちが長く苦難に満ちた離散生活と差別からの解放を求めて、19世紀のヨーロッパで始めた民族運動だ。 シオンの丘(エルサレム)に戻り、ユダヤ人の国を再建しようという土地と結びついた運動となり、1948年の現代イスラエル建国の礎となった。 建国は多くのパレスチナ難民を生み、アラブ諸国とイスラエルとの度重なる戦争につながった。しかし、いまイスラエルで多くの論者が危機感を示すのは、ユダヤ人国家の存続を危うくしかねない「内なる脅威」だ。 「ユダヤ民族はバル・コフバの乱に向けて突き進んでいる」-。対外諜報機関モサドの長官を務めたシャブタイ・シャビット氏による、こんな見出しの寄稿が11月末、有力紙ハアレツに掲載され